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捨て猫という名前の猫

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新たに柚木草平の担当となった月刊EYES編集部の小高直海。編集部期待のエース候補として、日夜編集業務に携わる彼女が受けた一本の電話が、柚木を深い憂鬱に誘うことに。若い女の声で「秋川瑠璃は自殺じゃない。そのことを柚木草平に調べさせろ」と言って切れたその電話の事件は、女子中学生が三軒茶屋の雑居ビルから飛び降り自殺を図ったものだった――
 道を歩けば芸能界のスカウトが寄ってくるほどの美少女が、うらびれた雑居ビルでひっそりと息を引き取る。だれもが羨むほどの美少女の突然の死に疑問を抱いた柚木は、瑠璃の生前の足跡をたどってみる。
 瑠璃が通っていた原宿の手作りアクセサリーショップで個性的な美人オーナー、そして青井麦という少女と出会う。さらに、瑠璃の母親もとびきりの美女で――。
 柚木が調査を始めた事件は、さらに加速的に動き出してゆく。事件の背後に蠢く存在に気付いた柚木が導きだした真相とは?




樋口有介さんの本です。

そういえば、樋口さんの本を読んだのはとても久しぶりです。
柚木草平シリーズ、特に柚木を語り手においての作品は実に9年ぶりとのこと(!)で、永遠に歳を取らないこの主人公の行く末が気になる所で(笑)

相変わらず綺麗な女に惚れやすく、女に対しては口がうまく、貧乏で別居中の妻にはぐだぐだ言われ、娘のご機嫌取りに翻弄されて・・・の柚木ですが、今作はなかなか引きつけられる内容でした。


今更金で子供を売る親、なんていう設定は珍しくもなくて、それを信じたくないと思った柚木の気持ちはとてもわかるけど、でもありがちと言ったらありがちな話だったかもしれない。

だけど・・・実の親にも捨てられ、引き取られた義理の親との折り合いも悪く、学校にもろくに通えず、ネットカフェや友人の家に泊まり、アルバイトをして暮らすしかない麦の最後が、あまりにもあまりにも理不尽で、不幸で、浮かばれないと思いました。

その真相を突き止めた時、麦の死がそれを証明する事になったのは、せめてもの救いだったのでしょうか。


それにしても、意外や意外、読み終わるのに大変時間がかかりました。
今回は今までのシリーズものの中でも、一番興味深く読めた感じがしたのですが、相変わらず読者を置いてけぼりにして、柚木だけが自分の中で勝手に事件の真相を見破って納得して、ラストへ・・・みたいな展開が惜しいと思いますね。。

もうちょっと読み手を一緒に連れて行って欲しいと思います。

多分、同じ探偵?ものとして、米澤さんの「犬はどこだ」がとても面白く感じたのは、読者と一緒に主人公が動揺し、疑問を持ち、事件の解決へと導いてくれる感じだったからだと思うのです。

キャラとしては個性的で良いし、会話のテンポの良さは相変わらずキレがあっていいと思うのですが、その点を何とか改良していただきたいのですが、どうでしょう?樋口さん。