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きりこについて

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きりこは、ぶすな女の子。だけど両親にとても可愛がられて育ったため、自分がぶすだなんて思ってもみなかった。
ある日きりこは、体育館の裏で小さな黒猫を見つける。「ラムセス2世」と名付けられた猫は、たいへん賢い猫で、しだいに人間の言葉を覚えていった。
きりこが小学5年生のとき、ラムセス2世に手伝ってもらい、大好きなこうた君にラブレターを書く。だけど、こうた君はクラス全員の前で「やめてくれや、あんなぶす」と冷たい一言。その出来事がきっかけで、きりこはみんなに疎まれるようになる。
食べることもやめ、学校にも行かず、ほとんど寝て過ごす毎日。そんなきりこに、ラムセス2世は、猫の基準では、きりこがどれだけすばらしいかを話して聞かせる。
そして、きりこは引きこもることをやめ、外に出る決心をする。夢の中で泣き叫んでいた女の子を助けるために……。

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西加奈子さんの本です。

猫が語る小説はいくらでもあるけど、この物語は少し特殊だ。
語り手の猫(ラムセス二世)の飼い主、『きりこ』についてが描かれている。

100人の人間に聞いたら、100人に「ぶす」であると言われてしまうような、親族の外見の欠点を一つずつ受け継いでしまったかのような、とてもインパクトのある顔をしている。

しかし、両親から可愛い可愛いと言われ続け、まだ現実を知らない幼い子供達の間でお姫様でいられたせいで、きりこは自分が世界で一番可愛いと思っている。

世にも不細工な人間、が出てくる小説も多いけど、こんなにも「自分」を大事にしているぶすな人間なんていただろうか!

外見より中身、それが一番大事なんて皆は言うけれど、やっぱり外見で判断される世の中で。

ビューティーコロシアムを見てると、外見的な要因から、虐めや迫害を受けてきた女性達が沢山出てくる。
慰めになるかは分からないけど、ぜひそういう人にこそ読んで欲しい。
きりこのような生き方も恰好良い。
自分は自分なのだから。

そう思えるまでには、きっと沢山の時間が必要だろうけれども…。

猫達の言う、猫の世界。
きりこの美しさに酔いしれる猫達の感性は、人間界ではありえない事なのだろう。
美しい人間がもてはやされ、人気者になる世界だから。

きりこの周りの、何かしかの問題を抱えた人間達が、きりこの存在によって良いように変わって行くラストが素敵だった。

ラムセス二世のたたずまいも素敵!
猫好きにはぜひ読んで欲しい一冊である。