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COW HOUSE ―カウハウス―

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わけあって25歳にして窓際族になった僕の仕事は、会社所有の豪邸の管理人。その豪邸に、いつの間にか集まったのは、なぜか丑年ばかりで――。




小路幸也さんの本です。

ああ、染みた。
小路さんの本ってどうしてこんなに温かい気持ちになれるんだろう。

最近訳もなく(ないわけでもないけど・・・)落ち込む日々なので、こういう優しい物語はヤバいですね。
温か過ぎて泣きそうになりました。


家族の温かみをよく知らないまま生きてきた私は、それでも健全な?大人に成長できただけましなのかもしれない。
けど、小路さん程家族を描いたらここまで読み手に余韻を残してくれる作家さんってなかなかいないんじゃないかな。

結婚して、家族を作るっていうのは簡単なように描かれているけど、ある意味でお互いがお互いの人生を背負っていく決意を固めるってこと。
言ってしまえば他人の人生だ。

それを重いと思うか、受けてたとうと受け止めることが出来るか・・・。

小路さんの作品に出てくる男女の関係が、とても好きだ。

自然に、それはまるで必然的なように、物語の中で登場人物のカップルが出会って、結婚に至るまでのプロセスは、劇的な何かがあるわけじゃない。

お互いの過去を、しかもその過去はなかなか重いのでは・・?と思うような一瞬の描写があるんだけど、それを敢えて明かさないという手法が逆に映えて、だからこそ安心して読めるし、物語のスパイスになる。




ある出来事から異動を命じられた主人公・畔木と、それを支える彼女の美咲、冷たいようで影から支えてくれる部長の関係がとても良いです。


登場人物のその誰もが、深かったり浅かったりしてもそれぞれの事情を抱えているんだけど、偶然丑年の人間が集まったから「COW HOUSE」という安易な命名も何だか素敵だし、こんな大きなお屋敷に皆で住めたらどれだけ楽しいんだろう!

温かい気持ちにもなれて、この大きな家に住めたら・・・と想像しながら読んだら、かなり楽しめました。

やっぱり小路さんの作品、自分は大好きです。


小路さんの描くカップル、良いですよね。
男性作家で憧れてしまうほど素敵なカップルを描けるのって、他には伊坂幸太郎さんとか、中村航さんとか。

女の子の、可愛いんだけど芯が強くてしっかりしている感じと、男の子のちょっと頼りないんだけど優しい・・・みたいなのが何だか自分は好きみたいです。


心が疲れている人には、ぜひともお薦めしたい一冊です。