No-music.No-life

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刻まれない明日

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いつか忘れなくてはいけない大切な人。あの感動から3年――“失われた時が息づく街を舞台に描く待望の長編。存在しないはずの図書館から借りられる本。ラジオ局に届く失われた人々からのはがき。響き渡る今はもう無い鐘の音。席を空けて待ち続けているレストラン。「開発保留地区」行の幻のバス。「開発保留地区」――それは10年前、3095人の人間が消え去った場所。街は今でも彼らがいるかのように日々を営んでいる。




三崎亜記さんの本です。

失われた町の続編とも言える短編集です。
短編とは言え、全ての物語がリンクしているので、一つの長編としても読める作品になっていると思います。


三崎作品は・・・必ず全て読んでほしいですね。
前回出てきたものが、さりげなく新しい物語に組み込まれている。
それが読んでいる側としてはとても嬉しくて思わずニヤリとしてしまうのです。


特に嬉しかったのは、短編の「動物園」「図書館」と共に登場してきていた一人の女性の成長が見られる事でしょうか。

職場の上司との不毛な恋愛に疲れ果てて、とある町にやってきた彼女が出会ったのは・・・・


どの作品も、「終わりの始まり」がテーマとなっているのかもしれません。
絶望的に思えた現状が、大切な人との出会いによって変化していく様は、読者にも勇気を与えてくれるかのよう。

「失われた町」だけではなく、随所に過去作品に出てきたもの(「動物園」のヒノヤマホウオウや、「七階撤去」、「図書館」に出てきた登場人物のリンクなど)がさりげなく書かれているので、それを見つける度に嬉しくなりましたね。


そして、何故か年の差カップルが成立しまくる短編(笑)

だけど、三崎さんの描く女性像、とても好感が持てます。

男性作家が書く女性像で好きなのは、伊坂幸太郎さん、中村航さんなのですが、三崎さんの描く弱さを持っているのだけれど、ちょっと気が強そうな女性、っていうのも悪くないです。


個人的に「失われた町」は、序盤で入り込めない作品ではあったのですが、後半からぐっと面白くなった作品なんですよね。
だけど、全然内容を忘れてしまっていることに気づかされました。

再読してから読んだら、もっと楽しめたのかも。