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名もなき毒

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どこにいたって、怖いものや汚いものには遭遇する。それが生きることだ。財閥企業で社内報を編集する杉村三郎は、トラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため、私立探偵・北見のもとを訪れる。そこで出会ったのは、連続無差別毒殺事件で祖父を亡くしたという女子高生だった。




宮部みゆきさんの本です。

宮部さんの本は、割と読んできたつもりですが・・・まだまだ読み切れていない本が多いのです。
地元の図書館に置いてあるのは、あまり人気がないのかいつも同じ作品ばかり。

でも、今回は珍しく置いてあった本作を借りて読んでみることにしました。


読んですぐに気付きましたが・・・あ!「誰か」の続編じゃないですか!

知らずに借りただけに、何だかとっても嬉しく思いました。
主人公の杉村氏のお人良しっぷりが、実は結構好きだったりしたので。

それに、本作の方が自分は好きだったりします。


惜しむらくは、無差別毒殺事件、トラベルメイカーのアルバイト、シックハウス症候群、土壌汚染、裕福な人間と貧しい人間の格差・・・様々な話が入り乱れて、若干描き切れていないな・・・という印象を持った所くらいでしょうか。

それにしても、このトラベルメイカーの女性は怖いですね。
侮っていると、どんどん予想外の事を引き起こして・・・最期にあんな展開になってしまうとは・・・。

それと、毒殺犯の動機。
納得できないけれど・・・だけど、なぜか悲しくて泣きそうになってしまいます。

何もしなくても当たり前に得られる幸福を、当たり前に得られない人間がいるのだということ。

杉村氏と、裕福に育ってきた妻との、多分一生分かりあえないと思われる部分が本作ではさらに浮き彫りになってきて、ちょっと怖いです。

そういう色々な事を考えさせられた長編。

読み応え十分。
やっぱり宮部さんの作品は大好きです!