No-music.No-life

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チェーン・ポイズン(再読)

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あと1年。死ぬ日を待ち続ける。それだけが私の希望――
かりそめに生きることは、もうできない。選んだのは「死」。不思議な自殺の連鎖を調べる記者。そこに至るただひとつの繋がり。

誰にも求められず、愛されず、歯車以下の会社での日々。簡単に想像できる定年までの生活は、絶望的な未来そのものだった。死への憧れを募らせる孤独な女性にかけられた、謎の人物からのささやき。
「本当に死ぬ気なら、1年待ちませんか?1年頑張ったご褒美を差し上げます」
それは決して悪い取引ではないように思われたのだが――




本多孝好さんの本です。

割と早い段階で再読してしまいましたね(笑)

1度読んで、かなり素晴らしいと思った作品だったので、きっとまた再読しちゃうんだろうなって思っていたのですが。

地元の図書館に、本気で誰にも借りられずに毎回あるから(苦笑)、それなら私が借りるわよー!という訳で、借りちゃいました。


何が素晴らしいって、「自殺」や「生と死」がテーマになっているというのに、ただ重くて暗いだけの話にはなっていないこと、でしょうか。

それどころか、死を描いているというのに読んでいると「生きることの意味」について考えさせられる。




単調な日々。誰からも必要とされない自分。
存在意義を見失ったある女性が、ある日「眠るように死ねる」という手段を一年後にくれるという謎の人物との取引を持ちかけられる。

取引・・と言ってしまったら大袈裟かもしれない。
悪い冗談なのかもしれない。
だけどそれを信じてみようと思ったのは、その取引が悪いものではないと思えたからだった。


大学卒業から勤め続けてきた会社を辞め、退職金と失業保険や貯金で繋いでいきながら消費する1年。

彼女は施設でのボランティアをしながら、残り時間を過ごしていくことにする。

生命保険に加入し、1年後には2,000万の保険金が下りる―
2,000万円であれば、自分にとってもっとも妥当な金額に思えた・・・


1年後、死ぬための準備。

けれどそれが、少しずつ生きたいと思い、諦めるはずの未来を描くようになる変化。
それはとても心が震えるほど嬉しく、いとおしいものに思えてくるから不思議なのです。

そしてこの本の素晴らしいというもう一つの点が、ミステリの要素が沢山盛り込まれていることでしょうか。

ある著者と同じ名前。
ホスピスでのボランティア。
36歳の女性。
1年後の自殺。


散りばめられた附線が、もう一人の物語の登場人物の原田の目線から追っていく話とリンクする結末。

その偶然の一致に、何故だかひどく胸が熱くなるのです。

ああ、本当にこの本は素晴らしい!