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一千一秒の日々

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「ウフ」連載の短編6編に「ダヴィンチ」に掲載された1編を加える。大学生の男女を主人公にした連作は、みずみずしい青春小説であり、ちょっと苦い恋愛小説でもある---

島本理生さんの本です。
やっと買う事が出来ました。

で、昨日帰りの電車の中から読み始めて、今日で読み終えました。
短編なので読みやすいというのと。
島本さんの書く話は、どれもこれもが素晴らしく・・いつの間にか本の世界に入り込んでしまうんです。

この短編は、一話一話で登場人物が繋がっていて・・大学生の女の子、男の子が主人公の恋愛小説です。

”??

付き合って四年になる彼氏、哲から突然に「晴れたら次の土曜日に遊園地へ行こう」と誘われた真琴。
そしてお互いが話す事といえば・・楽しかった思い出『終わったこと』ばかり。

遊園地で二人きりの時に、彼氏が誰かに送っていたメール。
それに気付きながらも、最後の最後まで問いただそうとはしない主人公。

お互いにもう終わりが来るのを分かっている。
だから楽しかった過去の話しか出来ない・・・

そして、別れ・・・。

個人的に、一番この話が好きかもしれません。
失恋ものは大好きなんだよなあ。

⊆祁遒猟未蟇

大学の劇団公演の千秋楽の夜、突然現れた遠山さん。
そして、立派な花束を手に主人公瑛子に言った言葉は・・
   「俺と付き合ってください」

子供の頃から男の人に対して警戒心が強く、あの人は素敵だと思うときがあってもそのたびになにか違うという気がしてしまう瑛子。

そんな瑛子は、高校の時に女友達に恋をする。
しかしその恋には始まりすらなく、終わることもできずにいる。
今でもたとえ叶わなくても、ずっとそばにいてくれればいいような気さえしている・・・。

そんなことを遠山さんに話すと
「相手が変われば付き合い方も変わるし、一度失望することがあってもそこから学習して、さらにより良い関係が生まれることだってある。始める前から決め付けるのはつまらないよ」
と言う。

そして瑛子も少しずつ心を開き始める・・と、とれる爽やかな締めくくりで終わります。
ちなみに好きになってしまった女友達というのが,亮膺邑?⊃振廚覆鵑任垢諭

青い夜、緑のフェンス

真琴と瑛子がよく行く『蜂の巣』というお店で働く針谷。

太っている自分を「育つ」という言葉で肯定する事で自分を保っている。

そんな針谷には、中学の頃からの付き合いが続いている一紗がいる。
一紗は可愛い女の子だ。
故にもてる、しかし変な男とばかり付き合ってしまう。
そしてそのとばっちりをくらうのが、針谷。

別れたときのいざこざに、いつも巻き込まれることに・・そのあまりの頻度にあきれている針谷。

一紗は針谷に
「相手が自分を好きになることなんて絶対ないと思っているのに、心のどっかで空想して、その間にそこそこ気に入った相手と付き合って、同じ位置から動けなかった。そうして何年も経っちゃったよ。」
というと、

針谷は言う。
「今は好きな男がいないからそんな気がするだけだ。夢中になれる相手が現れれば、錯覚だったって思うよ」

そして店に来た一紗。タチの悪い元彼。
その男から一紗を守った針谷。

そして気付く、自分の想い。

ちょっと微笑ましくなるような。じれったいような。
針谷に共感(同情?)してしまいます。

げ討僚わる部屋

針谷の友達の長月が主人公。
飲み会で偶然に出合った操とひょんな事から付き合いだした長月。

何事にも執着しない長月と、過剰なまでにやきもちをやく操。

精神的に不安定な操にだんだん面倒だという感情になってくる長月。

彼女の左上には何本もの傷跡。
自分なんか放っておいて、という操。

最後の最後まで、結局通じ合うことは出来ない二人。
そしてまた、部屋に一人になる長月。

どうしようもない事が世の中にはいっぱいあるのだ。
でも、この話はちょっと切ないなあ・・。

ゲ虻裏から海へ

真琴が哲と付き合う前(高校時代)に付き合っていた彼氏、加納君の話。

「哲にふられちゃったよ」という電話が突然元彼女の真琴からくる所から話が始まる。

今でも別れた恋人を大事にしている加納君は誠実で生真面目で頑固だ。

故に、高校時代自分自身の問題に手一杯で、彼女が自分の元へ来た時にも何も出来ずに帰してしまった翌日、彼女の祖母が亡くなったことを知り、何もしてあげられなかったことを後悔している。

家庭教師先の教え子の姉、沙紀との絡み・・これから始まる、真琴と過ごすひと時。

加納君の誠実さに、心惹かれますね。
沙紀の間違いを正してあげられただろう事を信じております。

新しい旅の終わりに

再び、真琴が語り手になります。

加納君と旅行に行く事になった真琴。
一度は付き合った相手とは言え、恋人がいない同士の旅行は真琴自身にもいつもは感じないドキドキを起こさせる。

旅行中に溢れだす、元彼哲への想いを吐き出すと「焦る必要はないんだよ、ゆっくりいこう」と言う加納君に真琴は安心する。

加納君・・かっこよすぎるぜ。ちょっと。
と、思いながら・・この二人はまた付き合うことになるのかな??という爽やかな感じで終わります。
この二人には幸せになってもらいたいですね。

で最後の話は
夏めく日

もうすぐ結婚を控える石田先生。そして異動も決まっている。
そんな先生に淡い恋心を抱く主人公。

先生と二人きりになった時、とある提案をする。
「私と手をつないで図書室の中を歩いてくれませんか」

重い足取り、息が詰まりそうな沈黙。

そして、先生の結婚相手片倉先生に怪我をさせた犯人の名前を告白する。

だけど本当は・・・

「私は石田先生が好きだったんじゃなくて、片倉先生が嫌いだったんです」

何とも言えず、切ない話です。
報われない想いと真実・・

主人公が佐伯という名前みたいなんですけど、これは二話目の瑛子さんの学生時代の話なのでしょうか?

というわけで・・この苦くて切ない短編をぜひ読んで下さい。
島本さんは、どうしてこんなに共感できる作品を書けるのかなあ。