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あした吹く風

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17歳の少年と34歳の女性歯科医。心を焦がし、渇き、相手の全てを求めてやまない欲望に囚われる、そんな相手に出会ってしまったら……




あさのあつこさんの初の恋愛小説。

そうか、意外だけど・・あさのさんって恋愛小説という類では本を出してなかったですね。

児童書、ミステリー、ヤングアダルト、スポーツ、青春、時代小説、ホラー、SF・・・

あさのさんの本は、大分読んできたつもりだけれど、ここまで多ジャンルの話を書き分けられる作家というのもすごいと思う。

宮部みゆきさんあたりもそうですけど、あさのさんもやっぱり上手い。

児童書、ヤングアダルト、時代小説、青春小説・・それぞれで書き分けているし、それでいて余韻の残る作品を書ける作家だと思います。

しかし、恋愛小説・・しかも、高校生とバツイチ34歳の恋というあらすじを見たときは、全然期待できなかったどころか、最早諦めてもいました(笑)

何となく、石田衣良さんの娼年あたりを思い浮かべてしまったというのもありますが、昨今読んできた恋愛小説がどれもパッとしないというか、全然感情移入できぬまま読み終わってしまっていたからです。

そして石田さんの恋愛小説に「こんな展開ねーよ!」と突っ込みを入れてしまう私は、勿論この作品も同じようなものだろうと思っていたのでした。


年の差、14歳。
運命的に出会い、惹かれ、抱き合い、のめりこみ・・しかし周囲に関係がばれ、世間体を気にし、すれ違い、破滅の運命―

という展開を容易に想像できるではないですか。
現実問題、34歳が17歳と付き合ったとしても、いずれにしろ・・ほぼ破滅的な運命を辿るであろうことは目に見えております(皆が皆、そうではなかったとしてもね)。

しかし、そこはあさのさんです。
女性的目線で描かれた少年と年上女性の関係は、何処かもどかしくて愛しいのです。

惹かれあい、しかし距離を置こうと努めてみても、最後に辿りつくのはやはりお互いへの想い。

実際には一筋縄ではいかないでしょう。
続編があったら、きっとこんな風に前向きな終わり方にもならないだろう未来は見えているけれど、何処か希望をもたせてくれるラストでした。

やっぱり自分は、あさのさんの描く少年が好きです。