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シグナル

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地方都市の映画館でアルバイトを始めた恵介。そこで出会った映写技師の杉本ルカは、外へ一歩も出ることなく映写室で生活しているらしい。バイト採用の条件は、不可解な三つの約束を守ることだった。―切なく胸を打つ、感動の青春ミステリー。

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関口尚さんの最新刊。
サイン本があったら購入したかったのですが、結局見つからず図書館で借りました。

ああ、私は好きですね。関口さん。

出身が栃木県大平町の作家さん。

限りなく栃木に近い茨城に住む私の近辺では、免許を取ったら大平山に行くというのが一種の遊びのようなもので、で、勿論夜に友達4人でドライブした記憶があったりして。

地元も通っている国道50号を栃木方面にひた走ると、大平町を通るわけで。
そんなわけで、勝手に愛着が沸いている作家さんなのです。
出身大学も茨城大ですしね。

そんな関口さんの小説の中では、茨城だとか栃木だとか、田舎町が舞台になっていたりします。
この話も例外ではなく、栃木県足利市です。

足利といったら、リリィシュシュのすべてのロケ地として有名(?)ですが、両毛線50号線小山宇都宮線なんていう言葉が出てくるだけで何だかむずがゆいような、嬉しいような(笑)

そういう点でも楽しめた一冊でありました。

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主人公の恵介は、家庭の事情で東京の大学を休学し、アパートや家具を全て引き払い地元へと戻ってきた。
その理由は、働きもせず借金に手を出してまでギャンブルに明け暮れる父のせいで、借金の肩代わりをすることになった母と、学費を稼ぐためにアルバイトをする生活を余儀なくされた恵介と弟の春人の経済的な事情からだった。

何としてでもこの一年の間に、学費を稼がなくてはならない恵介は、地元の映画館で時給1,500という映写技師のアシスタントというアルバイトを始める。

3年の間、一歩も外へ出ずに映写室で暮らしているという杉本ルカの怪我が治るまでの間、という条件つきでバイトを始めた恵介は、3つの条件を出される。

1.ルカの過去をさぐらないこと
2.月曜日にはそっとしておいてあげること
3.ルカとの恋愛はご法度であること

高い時給のためであればと条件を呑んだ恵介は、ルカにしごかれながらも順調に仕事を覚えていく。

一緒に仕事をしていく中で、少しずつルカに惹かれて行く恵介。
しかし、ルカの過去には何かがあるらしい。

噂に聞く月曜日のルカウルシダセブンとは一体何なのか?

そして、恵介に近づく男が現われ―

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一つ、残念だったのがレイジが現われた途端に、「ああ、こいつが・・」と話の展開を読めてしまったことでしょうか。

映写室から3年も一歩に出ない謎めいた女の子と、その噂・・その展開はなかなか引き込まれるものがあっただけに、中盤から少し残念ではありました。

ただ、物語全体としてはなかなか楽しめました(最近映画を観るようになったせいもあるでしょうが)。映画館では普段見ることは出来ない裏側の世界を覗けたっていう感覚もあり、恵介とルカの淡い恋というのも良かったです。

ラストもちゃんといい方向に向かっているんだなという感じが示唆されていて、安心して読みきることが出来ました。

ああ、あと。
恵介の父が、どっかの父とほぼ同じだったのが笑えました(自嘲めいた笑いですが)。
借金こさえてまで、ギャンブルって・・ねえ。
ほんとありえないよね、実の父!

そんな中で、恵介と弟の春人の仲が良く、母を大事にする兄弟っていう設定はとてもほっとしました。
先日読んだ羽田圭介さんの「黒冷水」みたいな兄弟の話を読んだ後なだけに、余計でしょうか(笑)

うん、やっぱり私は関口さんの書く物語が好きです。