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月のころはさらなり

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「母さん。あの後、父さんをどうしたの」母に連れられ田舎の古びた庵にやってきた悟が出会ったのは、不思議な力を持つ美少女と生意気な少年。村の禁足地にあるというこの庵の役割とは? そして、殴りつけたまま家に残してきた悟の父の消息は? 二度と訪れることのない夏の日をみずみずしく描き、圧倒的支持を得た大賞受賞作。

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井口ひろみさんの本です。

宮部みゆきさん推薦の一作というのを書店で見かけ、気になって早速図書館で借りてみました。
まだあまり知られていないのか、予約したらすんなりと手元に来ましたが・・

なかなか良いじゃないですか!


まず、タイトルからして惹き付けられました。
月のころはさらなり

語呂が言いというか、何処かで聞いた事のある言葉だと思ったら・・
枕草子でした。

夏は夜、月のころはさらなり。

ああ、春はあけぼのの春の部分だけは覚えているのに、夏は「夏は夜」までしか思い出せなかったんです。
そうかそうか、だから心が惹かれたのか。

話としては、現代が舞台なのです。
が、何か訳ありでとある場所へと行こうとする母に着いてきた悟は、御千木(おちのき)という小さな村にある「庵のおんば様」の元で、しばらく寝泊りすることになった。

足を怪我した母が回復するまでを目安として、その場所で暮らす事になった悟だったが、その家には、悟と母とおんば様以外にも、とても綺麗な少女・茅が暮らしていた。

茅は長い間この場所で暮らしているらしい。
慣れていない人と接することが苦手らしく、悟との会話もままならない。
しかしその綺麗な顔立ちをした茅に、少しずつ興味を持ち始める悟。

そんな悟に警戒を抱くのは、茅を好きな小学6年の真。
17歳の悟にタメ口で話し、茅に近づくなと文句を言う。

この場所では不思議ではない鈴鳴らしの子。
触れる事もなく、祠にある鈴を鳴らすことが出来る子どもは珍しくはないらしい。

何も分からぬまま、この場所へやってきた悟は、真や茅が目の前で実際に鈴鳴らしをやってのける姿に驚く。
そして、悟もまた、実感も沸かないまま鈴鳴らしが出来ているのだった―

この場所にある庵の本当の目的とは・・?

そして、悟は思う。
反撃し、あっけなく倒れた父は一体何処に行ったのか? 
母は車のトランクに、「何を入れた」のか?

母がこの庵にやってきた本当の理由とは・・

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あらすじだけ書くと、何か訳の分からん話だなあと思うかもしれませんが・・
ミステリっぽく見せかけて、最後は凄い温かい気持ちになるっていうそんな話でした。

ちょっと昔の言い伝え的な内容があって、微妙かも・・なんて思ったのは最初だけで、どんどん物語に引き込まれていきました。

17歳の男子にしては、少々可愛い主人公(女の人が書く男の子って感じですね)でしたが、私にはそれが良かったかもしれません。

文体もとても読みやすく、更によもや母は父を殺したのか?!と思わせて事実は・・っていう展開も、無理なく収まって、なかなか良い感じです。

真はきっといい大人になるんだろうなと思います。
個人的に、茅が凄く可愛いと思いました。

悟・真・茅・・何よりその人物達が生き生きとしていて、とてもよかったです。