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逝年

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リョウ、二十歳の夏。恋愛にも、大学生活にも退屈した日々を送るなか、ボーイズクラブのオーナー・御堂静香に見出され、とまどいながらも「娼夫」の仕事を始める。やがて、リョウは女性たちのなかにひそむ、さまざまな欲望の不思議に魅せられていく…。性愛の深淵を透明感あふれる筆致で描く長編小説。

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石田衣良さんの本です。
娼年」の続篇であります。

うーん…なんていうか、やっぱり私は石田さんの描く女性像に違和感を覚えてしまう。
男性作家の描く女性像というのは、結構偏りがあると思うんですけど(漫画でも、小説でも、男性好みな女性が描かれている事が多い気がします)・・その中でもやっぱり石田さんの描く女性にはどうしても同性として共感出来ない。

個人的意見で申し訳ないが、どうしても男性側の視点から見た理想の女像である気がしてならないのだ。

ただし、この娼年シリーズ(?)のリョウは、ボーイズクラブで「娼夫」としての仕事をするという役柄であるから、そこに出てくる女達は、さして比現実的ではないのかもしれない。

けれども。

まず、二十歳そこそこで果たしてここまで大人っぽい考えや行動が出来るのであろうか?
イメージや周囲の人間の話を聞くと、二十歳くらいの男といえば、やりたい盛りではないのか?
(言葉は悪いですが)

それとも、この話にも出てくるようにリョウの友達の若い男達が、「セックスには飽きてしまった」なんて言うものなんだろうか? まあ確かに、最近の若者にはそういう傾向も見られるとは聞くけれど、何となく曖昧な気持ちのまま、読み進めてみた。

性愛について、様々な形があるのだという事を改めて知るにはとてもいい小説なんだと思う。
扱う話の割には、いやらしくなく、割とさらりと読める内容なのだが・・けれどもやっぱり少し不満が残る。


いうなれば、娼年でオーナーの御堂静香を警察へと通報した、リョウの大学の同級生・メグミが、いやにあっさりと「こちら側」に回ってきたなということ。

あれだけ娼夫の仕事を忌み嫌っていた女の子が、果たしてそんな簡単に心変わりなどするのだろうか?
しかも、リョウの気持ちを知るために、自分でも娼婦を経験してみた・・って。
どうなんだろうか、それは。いささか強引な設定ではないか?

それを言うなら性同一性障害を抱えるアユムを好きになってしまった事にもいささか違和感を覚えるが、そういう恋もあるのかもしれない、ととりあえずそこは突っ込まないでおく。


そして一番考えてしまったのが、病気の進行と共に命がもう永くはないと分かっている静香の最後の願いをかなえてやるという事(=リョウとのセックス)なのだが・・

まがりなりにも、HIVを発症した人間が、本当に大切な相手とつながりたいと思うのは不思議なことではない。
けれども、本当に大事だと思うのなら・・そんな危険な行為をするのだろうか?

小説の中では、感染を防ぐためにありとあらゆる方向から感染予防を徹底させている様が描かれてはいるのだが、娼年で静香がリョウの欲を突っぱねるくらいの強さがないのはおかしいのではないか?

ああ、でも。
最初で最後なのだからいいんだろうか?

でも・・どうなのか、うーん・・私にはよく分からない。

けれども、何とも違和感だらけの読後感だけが残った。
今回はしたたかで強い静香の姿は全くない、最終的に悲しい結末を迎える彼女は、死を目前にして、人格を形成していた何かを永遠に失ってしまったのかもしれない。

私としては、前作娼年の方をお薦めしたい。