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心にナイフをしのばせて

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追跡!28年前の「酒鬼薔薇」事件。高1の息子を無残に殺された母は地獄を生き、犯人の同級生は弁護士として社会復帰していた。新大宅賞作家、執念のルポルタージュ

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数年前でしょうか。
書店で、話題の本という形で平積みされていたのが印象的だった本でした。

息子であり、兄を無残に殺された両親と妹の苦しみと、犯人のAは謝罪もせずに弁護士として社会復帰をしていた―

という衝撃の内容は、未だに私の中にも鮮烈な印象が残っていて、思わず図書館で借りてきました。


それにしても・・

読んでいて、辛い……直視できないというより、もう憤りしかない……


タイトルからして、被害者である遺族とその後弁護士になったという加害者Aについての話が詳細に書かれているのかな?
という風に勘違いをしてしまったのですが、本作は被害者の遺族・母のくに子さんと被害者の妹だったみゆきさんの証言を中心に、殺されてしまった加賀美浩さんの同級生、学校の先生、親戚から集めた証言を物語風に展開されていく本になっています。

しかし、読み終わって思ったのは・・私が一番知りたかった犯人のその後はほとんど分からずじまいだったという憤りでしょうか。

取材をもっとちゃんとしろよ、という憤りじゃなくて・・

後半の章になって、ようやく犯人Aが弁護士として社会復帰をしているという事実が明らかにされるのですが・・その事実を知った母のくに子さんが、決死の思いで犯人Aに電話をするのです。

しかしそのやりとりが酷い。
酷いというより、本当に人の命を無残に奪った人間の言葉なのか?と疑う程です。


「謝罪の言葉もなく、示談金として分割で振り込まれると約束していたはずのお金も二年で途絶えている・・罪を償う気持ちはないのですか?」

というような、くに子さんの訴えにAは言うのです。

「少しぐらいなら貸すよ(中略)五十万ぐらいなら準備できる―」

更に、くに子さんが「何で謝りに来ないんですか。謝りにきて下さいよ」と懇願しているというのに。。
Aは平気でこんな台詞を言うのです。

「なんでおれが謝るんだ」

呆然と、ただ呆然とするしかありません。

これが、本当に人を殺した人間の台詞でしょうか?

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酒鬼薔薇事件の加害者ですら、最終的には被害者に対して謝罪や後悔の言葉を滲ませていた記憶があるのですが(謝って被害者が戻ってくるわけもないのですが)、このAは一体・・
何を考えていたのだろう?

当事者の犯人Aは要領を得ない証言で、最終的には弁護士という道で社会復帰を果たしたというのに
殺された浩さんはこの世にはいない・・

結局この二人の間に何があったのか?
仲間うちでAへの「いじめ」とされるものがあったのか?

読み終えても、謎は深まるばかりでとにかく重い内容でした。

とりわけ、遺族の30年以上にも渡る事件が起こった事によっての苦しみが克明に描かれていて・・・
国の体制、少年法の疑問点が浮かぶばかりでした。

当時15歳だった少年には、本当に刑事責任能力はないのか?
同級生で仲良くつるんでいた相手を、十数か所も刃物でめった刺しにした上に首を胴体から切断したような少年が?

憤りはおさまらない。