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手紙

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強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く……。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。

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東野圭吾さんの本です。

会社の先輩から頂いた本です。
東野さんは、白夜行以来、2冊目の本でしたが・・読み始めたら一気に物語の中に引き込まれてしまいました。

映画化された時に、予告編で何度か見ていたので気になってはいたものの・・結局見ずに終わってしまった今作。

犯罪者の弟、という境遇はどう考えても重い話であることは察せられます。
何となく気が進まなくて・・でも読んでみたら、感動というのではないけど・・余韻の残る話でした。


先日、私の地元・茨城(土浦)で起こった殺傷事件がありましたよね。
そのニュースを見て、まずはやっぱり犯人にとって憤りを覚えました。
と同時に、何の罪もないのに「人を殺したかった」と言っていた犯人の標的になってしまった、不運としか言いようがない被害者に複雑な念を抱きました。

そして・・
この犯人には、妹と弟がいるそうですね。
私は、「ああ、妹と弟は・・これからどうなってしまうのだろう」という思いを抱きました。

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何の罪もない(しかも、最初は妹を殺すつもりだったと言っていたのだから、ひょっとしたら被害者側に回っていたかもしれない。身内を殺すという事件だったら、悲惨な哀れまれるような事件になっていたのかもしれない)兄弟(兄妹)は、これから犯罪者の弟、妹としてレッテルを張られ一生を背負っていくのだ。

可愛そうだ。

私は思った。
でも、これがもし・・私が被害者の家族だったら?

そんな風に思えるのだろうか?
否、思えない。
それどころか、何の罪もない犯人の身内に対してすら、憤りを覚えるだろう。
むしろ殺意に近いかもしれない。

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・・話は遠回りしましたが、つまりはこういう話なのでした。
あからさまに避けたり嫌がらせをするわけではないけれど、犯罪者の弟というだけで世間からは疎まれる、どう接していいか分からず気を遣わせる、結婚は反対される、バンドではデビューが出来ない、妻や子どもまでも差別される、職場でも不当な扱いを受ける・・

犯罪者の弟というレッテルを張られてしまった、主人公の苦悩とそれでも兄を心の底から憎むことが出来ない葛藤と現実が丁寧に描かれているのです。

そして、受刑者となった兄の唯一の心の拠り所が弟なのだと。
弟への手紙を書き、弟の近況を知ることが何よりも嬉しいのだと。

単純なことなのに、胸が熱くなる。

それでも、私はきっとこの物語に感情移入は出来ないんだろうな。
私は周りにも身内にも、幸い受刑者はいないから。

この物語に出てくるほとんどの人間と同じように、やっぱり関わりたくないという態度しか取れないのだろう。
悲しいけれど、それが現実。