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五年の梅

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友を助けるため、主君へ諫言をした近習の村上助之丞。蟄居を命ぜられ、ただ時の過ぎる日々を生きていたが、ある日、友の妹で妻にとも思っていた弥生が、頼れる者もない不幸な境遇にあると耳にし―「五年の梅」。表題作の他、病の夫を抱えた小間物屋の内儀、結婚を二度もしくじった末に小禄下士に嫁いだ女など、人生に追われる市井の人々の転機を鮮やかに描く。生きる力が湧く全五篇。

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乙川優三郎さんの本です。
本書は山本周五郎賞・受賞作らしいのですが、恥ずかしながら・・この作家さんを知りませんでした。

相も変わらず時代小説を読んでいる訳ですが・・この前まで読んでいた宮部みゆきさんの本は期待以上に面白かったのです。
ただ、読んだことのない作家で自分の食わず嫌いな分野・時代小説というだけで敬遠してしまう本書を、恐る恐る読んでみたのですが・・・

予想していたのよりも、遥かに素晴らしかったです。
宮部さんは、素晴らしいというよりは「面白かった」という表現の方がぴったりだったけれど、今作は読んだ後にほっこりと温かくなるような、まるで春の息吹を感じたかのような、何て表現したら伝わるだろう・・もう一度、読み返したいと思えるような作品でした。


後瀬の花
行き道
小田原鰹

五年の梅

の5編が収録されていて、最初から三作品までは、読みやすいなという感覚でただ読んでいたのですね。
けれど、蟹あたりから・・ラストのほんのり温かな読後感で引き込まれていって、最後の五年の梅梅の花が咲く季節のような、そんな暖かさを感じる話でありました。

時代小説が苦手、食わず嫌いという人にこそ、ぜひともお薦めしたい作品です。