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チョコレートコスモス

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舞台の上の、暗がりの向こう。そこには何かが隠されている。どこまで行けばいいのか? どこまで行けるのか? 2人の少女が繰り広げる華麗で激しいバトルを描く、熱狂と陶酔の演劇ロマン。

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恩田陸さんの本です。

チョコレートなのに、コスモス?
食べ物?花?

答えは花だそうです。
茶色のコスモス。

本文中にタイトルは最後の最後まで出てこないのですが・・今回の話は、演劇が舞台。

一人の脚本家が、街で見た不思議な少女に驚愕させられるところから静かに物語りは幕を開ける。

街にいる誰でもない誰かを、忠実に再現している謎の少女。


大学の演劇サークルに、飛び入りで参加希望を申し出た少女、飛鳥。
あの謎の少女が、まさに飛鳥である。

演劇経験なし、全くの素人となめてかかった新垣と巽は、飛鳥に即興で芝居をするように言う。

そこで見たのは・・あるはずのないものが、見えるような感覚。

新垣と巽は、この飛鳥の才能なのか、まぐれなのかが分からない不思議な魅力に戸惑いながらも参加を受け入れる。


響子は、芸能一家に生まれた芸歴10年以上を持つ女優である。
年齢は20歳そこそこでありながら、実力を兼ね備えている。
しかし、自分はこのまま芝居を続けて行くべきなのか、少なからず先行きの見えない不安を抱えている。

出演する演劇で、アイドルとして人気急上昇中のあおいと共演することになった。
あおいは初めての舞台でありながらも、堂々とした演技を見せ付ける。

少なからず浮かぶ、闘志。


そんな中、一つの大きな舞台のオーディションの話が舞い込む。

親友であり、ライバルでもある葉月、そしてあおいにはオーディションの声がかかったと聞いたのだが、自分には声がかかっていないことに愕然とする。

そうして、思わず東京行きの新幹線に飛び乗った響子は、オーディションの様子を見ることになる。
自分が選ばれなかった舞台。

そこでみる、ライバル達の演技-


二次審査に通過したのは、大女優・徳子、葉月、あおい、そして飛鳥。

そのオーディションの相手役として抜擢された響子は飛鳥との演技で確かに何かを感じ・・

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繋がっていないと思った話が、実は繋がっていて。

そういう意味でも面白かったし、飛鳥の得体の知れなさが怖いし気になる。

完璧に忠実に再現することが出来る、もはやロボットのような飛鳥。
自分というものを持っていないから、恐ろしい程忠実に再現することが出来る。

普段は地味で目立たない小柄な少女が、舞台に立つといきなり存在感を出す。


演劇の話といえば、石田衣良さんの下北サンデーズを読んだくらいだけれど、ガラスの仮面を読んでいる人は、それっぽいと思うのかな。

私は読んだことないし、テレビも見てなかったから分からないけど。

石田さんの下北サンデーズは、実際に舞台を見ていない人が想像して書いた、みたいな安易さがあった気がする。

けれど、今作は文字で追いながらも頭の中にその情景が浮かんでくるような不思議な心地になった。

厚みのある本ですが、とても内容の濃い話でした。
面白かったです。