ワガママで思いこみが激しい、女子力全開の華子。双子の弟で、やや人生不完全燃焼気味の理科系男子冬冶。今日も今日とて、新しい恋に邁進せんとする華子に、いろんな意味で強力な求愛者・熊野が出現。冬冶も微妙に挙動不審な才女、雪村さんの捨て身アタックを受け…騒がしくも楽しい時は過ぎ、やがて新しい旅立ちの予感が訪れる。理想の人生なんてありえないけれど、好きなひとと手をつないで、明日も歩いてゆきたい―。
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島本理生さんの新刊です。
サイン本売ってないかなと思って買うのを躊躇っていたら、地元の図書館で普通に借りられずに置いてあったので早速借りてしまいました。
読み終わって思ったのですが・・
島本さんは、こういう路線でやっていっても充分通用するな、と。
いつもながら、島本さんの描く物語は・・最初はとても穏やかに、そしてゆっくりと始まるのですが・・幸せそうに見えた主人公の影の部分がどんどん見えてきて、最後はアンハッピーエンド、という展開が多いのですが・・
島本さんは多分、この23歳~24歳世代の作家の多分どの人よりも群を抜いて才能があると私は思っています。
芥川賞の候補になりながら、惜しくも選考に漏れてしまうのも、多分まだ審査をする人が分かっていないだけって思いますし、言葉の紡ぎ方、物語の展開、引き込まれ方・・そのどれもが秀逸なのです。
ただ、ほとんどアンハッピーエンドで終わる話が多く、重く暗い話を書くという印象も少なからずあって(私は好きだけどね)だから、時々だけどハッピーエンドの話を読むと、物凄くほっとしてしまう。
と、同時にもしかしたら最後にどんでん返しがあって、また不幸な話で終わるのではないか・・といつだってびくびくしてしまうのです。
で、今作ですよ。
単行本かされている話の中でも、多分男の子が主人公の話って初めてではないですか?
これがまた、とても新鮮で良い。
これがまた、とても新鮮で良い。
で、準主役(主役は双子の弟)の双子の姉の華子のワガママで言いたいことをガツンと言って、読んでいるこっちが爽快な気分になってしまうこの子のキャラクターも、今までの島本さんにない感じでとても好感が持てました。
それに何よりいつも華子に振り回されて、自分のことは後回しに考えてしまうような天然のお人よしと言われちゃう位に良い奴の主人公・冬治がまた憎めない。
女性が描く男性主人公だな、という印象は少なからずあるのですが・・
凄くさっぱりと、爽やかな気持ちで最後まで読めました。
冬治を好きになる女の子、雪村さんの精一杯の強がりも可愛いし、華子を追いかけ続ける熊野さんも凄く良い。
そして、大学生ならではの日常と、進路に迷ってる主人公の姿は、何処か日常的な光景を見ているよう。
最後もとても希望が見えるような終わり方で、島本さんの作品の中でも大好きな一作になりました。
後で買おうと思います。
うん、良い本だった。
ちなみにこれで143冊。
明日は西加奈子さんの「さくら」を読みます。