No-music.No-life

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死者のための音楽

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…おばあちゃん、まるで後を追うみたいだったね。病院で、返事をしないおばあちゃんにむかって、話しかけてたよね。「ねえ、音楽は聞こえてる?」(「死者のための音楽」より)。怪談専門誌『幽』の連載で話題騒然の作家、待望の初単行本。

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山白朝子さんの本です。

まだあまり話題になっていないのか、この本は先日予約してすんなりと手元にやってきました。

噂によると、某ミステリ作家で若者に絶大な人気を誇るかの○一さんの覆面作家として活動する名前らしいのだが・・

本の帯にも、○一さんの推薦文があります。

プロフィールを見ると、趣味は焚き火という作家らしいですが(笑)

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短編集です。

どの話も、とても寂しくて切なくて、アンハッピーエンドばかりです。

ページ数的にはそんなに多くないと思われるのに、読む度に何だか切なく気分が沈んでしまうのはそのせいだったのでしょうか?


残虐な殺人描写、主人公のネガティブな調子、切なくてだけど何処か優しく・・不思議な余韻の残る話は、やはり○一さんの作品に通じるものがあります。


大抵の話が、昔話というか時代がとても古いものなのかな?という舞台設定なので、鬼とか村とか昔話のような話も多いです。

しかし、そこに現代の話も混じっていて、何だか一番印象的だったのが鳥とファフロッキーズ現象について'でしょうか。


ファフロッキーズ現象とは・・空から異物が降って来る現象らしい。

とある親子(父と娘)が住んでいる家の屋根に、大きな黒い鳥が怪我をして引っかかっていた。
手当てをし、家の中で治療をしながら鳥を飼うことにした親子。

鳥は少しずつ怪我を回復していったが、再び空を飛べるようになってもまた家に戻ってきた。

いつしかその鳥は、親子が心の中で望んだ事を叶えてくれるようになった。

例えば、リモコンが手元に欲しいと思えば鳥が娘にリモコンを運んできてくれる。
父が着替えのパンツを忘れたと思えば、タンスからパンツを取り出し運んできてくれた。

父はまるで息子のように鳥を可愛がり、娘とは兄であり弟のような関係となっていた。


ある日、父が強盗に襲われ殺されてしまう。
鳥は父を探すかのように空を飛びまわっていたが、それでも家には帰って来ているようだった。

娘は一人で暮らすようになり、父の遺産のことで親戚の叔父が家に訪ねてきた。

娘はこの叔父が嫌いだった。
父の代わりにいなくなってしまえばよかったのに・・

ふっと、そんなことを思ってしまった時にはもう遅かった。

鳥がすっかり回復し、空を飛び回るようになってから、アイスをすくうスプーンがないと思った時には空からスプーンが降って来たり、バスに乗るとき小銭がないと思えば空から小銭が降ってきていた・・

そうして、目の前に振ってきたのは人間の、叔父の小指、心臓・・血液だった-

人とかかわり、少しでも憎しみを抱いた時点で、鳥は自分のために人を殺めてしまうのかもしれない・・
そう恐れた娘は家に閉じこもるようになった。

しかし親切にしてくれた税理士の男性が家を訪ねてきて抱き始めた淡い思い。

どうか帰らないでと願う気持ちが、鳥が男性を襲うきっかけとなってしまう。

男性は大事には至らなかったのだが、本当に鳥が伝えたかった真実をひょんな事がきっかけで知ってしまい-

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最初の頃は、怪我をしていて家の中で親子の望んだ些細な事をかなえてくれる鳥なのだが・・
外に出るようになると、結構怖いですよね。

だっていなくなって欲しいと思ったら、その人の死体の断片が降ってくるんですよ?

しかし最後は・・意外な人間の裏切りで幕を閉じます。
この鳥・・不思議ですね。


と、ちょっとした怖さもあるけれど、根底にあるのはやっぱり寂しさでしょうか。

一つ一つは凄いインパクトがあるわけではないのですが・・一度読まれてみては?と思います。

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やっとこれで140冊です。

あと10冊・・・