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重力ピエロ

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ルールは越えられる。世界だって変えられる。読書界を圧倒した記念碑的名作。文庫化にあたり改稿。 兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――

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伊坂幸太郎さんの本です。

図書館で予約したのが、確か10月。
待ちましたよ・・ええ、3ヶ月も待ちましたよ。。

いやはや、期待以上でした。
想像していた話とは違って・・結末に向かうにつれて、胸が熱くなる感覚に襲われました。
久しぶりに凄い満足感を得た本だったかもしれない。

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春が二階から落ちてきた。


まず、冒頭のこの言葉が意味深で・・それでいてぐいっと凄い勢いで物語に引き込まれてしまう。

物語は、主人公・泉水とその弟・春を中心に展開していく。

この兄弟は、半分しか血が繋がっていない。

若く美しかった母が、レイプされた時に身ごもったのが春だった。
父は母から妊娠を告げられた時、産む事に決めた。

周囲からの非難、好奇の目にさらされながらも家族は暮らしてきた。
決して悲観的にはならず、きっとどの家族よりも幸せに暮らしてきた。

春は外見もかなり秀でているが、絵の才能も持っていた。
ある事があってから、絵を描くことから遠ざかっていた春だったが、グラフィティーアートを書くことになった。
春は、同時に街中に溢れるグラフィティアートを消す仕事もしていた。

泉水は遺伝子検査やDNAを扱う会社に勤めている。
秘密裏にある男のDNAを採取し、結果を待っている。

父は癌に侵されている。
入院中の父は、大分痩せたように思われるが好奇心だけは旺盛だった。

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最近仙台市内で起こる放火事件。

春が見つけたのは「グラフィティアート」に書かれた文字、放火場所との関連性だった。
途中参加が嫌いな泉水は、いつしかその文字との奇妙な関連性を持った遺伝子記号に興味を持ち調べ始める。
時を同じくして、父もその謎を解こうと事件の関連性を調べ始めるのだが・・・

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父・兄・弟。

春の父親、探偵の黒澤、春のストーカーの「夏子」・・

奇妙な関係性を持ち始めた放火事件を調べていくうちに浮かび上がってきたのは-

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何が凄いっていうと、いつもの登場人物達のリンクという技だけではなく、それ以上に深い話だって事でしょう。

単なる謎解き?・・いや、違う。

これは、家族の、父と子の、兄と弟の物語である。

血の繋がりなんて、なんてちっぽけなものなのだろう・・そう思いながらも、遺伝子からは逃れることはできない。

母がレイプされて出来た子供である春の、抱えていた想い。
故に性に強い嫌悪感を持っている春。

そんな春の時折見せる表情に怖さを感じながらも、見守り続けている泉水。

多分誰よりも大人で凄い人間なのだと思われる、父。

そして既に物語中では死んでしまっているが、多分一番強い人間である美しい母。


レイプは、確かに人を傷つけ精神的な傷を与えるが、殺すわけではない。
だけれど・・

「・・犯罪の快楽は俺にあって、犯罪の被害は、俺の外部にある。ということは、強姦は、悪じゃない」

という言葉に物凄く憤りを覚える。


クライマックスで展開されるある出来事があるが、どうしても私はそれが悪いこととは到底思えない。
いや、悪いことである。
けれど・・
私はどうしてもそうは思えないのだ。


救いとしては、母が襲われるシーンが描かれていないこと。
けれども、さらりと使われるその言葉が痛々しく、競馬場で若い男と対決することになってしまった母の細かな震えというような些細な表現が、事件の生々しさを描いている気がしてならない。


ああ、だけど。

読んだ後、胸が熱くなった。

色々な思いが私の中を満たしてくれた、そんな一冊だった。

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そしてこの作品は映画化されるそうですが、キャストとかがまだ分からないんですよね。
生半可な気持ちで作って欲しくない映画ですね。
楽しみです。

あと、この本で138冊目

150冊の道のりは果てしないです。無理かも・・