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しずく

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そうか、あなたがいたんだ。迷っても、つまずいても、泣きそうでも。人生って、そう悪くない。「女どうし」を描く六つの物語。

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西加奈子さんの本です。

西さんの作品を読んだのは、アンソロジーくらいなものでじっくり読んだのは今回が初。
実は気になっていたのであります。

今回は短編集。

微妙なものもあったけど、ほとんどが爽やかな後味を残してくれる話ばかりでした。

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ランドセル
灰皿
木蓮
影
しずく
シャワーキャップ


お薦めは、表題作のしずく灰皿シャワーキャップ

特に「しずく」は後味が少しほろ苦くて、でも優しい物語でした。

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語りが、二匹の猫の目線です。

イラストレーターをしているらしい彼女と、小説家をしているらしい彼氏。
お互いが連れてきた猫は、毎日喧嘩をしながらも何だかんだで毎日一緒にいる。

そんな猫達のお気に入りは、シンクにあがって飲む水。
古い家の水道は、きちんとひねっても蛇口からポタポタと水が落ちてくる。
その水を飲むのがお気に入りなのだ。

ある日、今まで売れなかった小説家の彼の仕事が成功する。

お祝いに食べた初めてのカレイ。
笑いあっている二人。それを見て嬉しくなる二匹。

お祝い=カレイのことだと認識した猫達。

更にある日のこと。

今度は彼女のイラストの仕事が成功する。

再びお祝い。
けれど、今度はサーモン。

それでも初めて食べる味に興奮する猫達。

二人の仕事は成功し、忙しくなっていく。
それと共に豪華なご飯にありつけるようになっていったけれど、少しずつ猫達に構ってくれなくなる。
そうして、いつも綺麗だった家が少しずつくすんでいくようになって・・二人の口喧嘩が絶えなくなっていく・・

そうして、突然のお別れ・・

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とにかく、猫が可愛い。

人間の言葉を理解しているようでしていない知ったかぶりのプライドの高いお互いの猫が、「お別れというのはこういうことよね」「そういうことでしょ」というような掛け合いが面白い。

けれど、やっぱり動物っていうのは人間の勝手でこうしてお別れさせられたり、何だか切ない。

でも、それと同時に久々に忘れかけていた優しさを思い出した気がする一冊だった。