実家で飼っていた愛犬・ブックが死にそうだ、という連絡を受けた僕は、彼女から「バイクで帰ってあげなよ」といわれる。ブックは、僕の2ストのバイクが吐き出すエンジン音が何より大好きだった。四年近く乗っていなかったバイク。彼女と一緒にキャブレターを分解し、そこで、僕は彼女に「結婚しよう」と告げる。彼女は、一年間(結婚の)練習をしよう、といってくれた。愛犬も一命を取り留めた。ブックの回復→バイク修理→プロポーズ。幸せの連続線はどこまでも続くんだ、と思っていた。ずっとずっと続くんだと思っていた―
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中村航さんの本です。
中村さんは、アンソロジーではちょこちょこ読んでいたけれど、単独で読んだのは確かリレキショ以来だと思う。
しかも、お薦めされて読んでみたら・・微妙だったので(他の作品はそうでもないから、たまたまこれから読んでしまったのも都合が悪かったかもしれない)遠ざかっていた作家でした。
MANZAIを買う時に、同時に新刊として文庫が売っていたので買ってしまいました。
前から読みたいと思っていた作品だったのですよ。
主人公の恋人が死んじゃう系であることは、もう明らかに察しがついていて、
と思いながら読み始めました。
結果・・
ただ、久しぶりに男性作家が描く彼女のキャラクターに好感を持ちました。
明らかに男性目線で書いた想像上の生き物か!?と思われるような男性に尽くしちゃうタイプの非現実的な女子とか、明らかに偏った男性目線で書いた清らかすぎる女子とか・・
あまりにも現実感のない女子像に正直最近うんざりしていたのです。
だがしかし・・どうでしょう。
今作の彼女。
今作の彼女。
可愛い
もう、文句なしです。
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実家で買っていた愛犬「ブック」が死にそうだ、という実家からの連絡。
ブックとの出会い、思い出・・
そういえば、バイクの音が好きだった・・
そういえば、バイクの音が好きだった・・
彼女の提案。
ずっと乗っていなかったバイクを修理し、実家までバイクで行ってみたら?
ずっと乗っていなかったバイクを修理し、実家までバイクで行ってみたら?
そして、バイクの修理を始めた僕。
バイクは何とか治り、ブックも何とか持ち直す。
そして、彼女に求婚した僕。
それを受け入れる彼女。
それを受け入れる彼女。
彼女は、結婚前に1年の間練習期間を設けようと提案する。
僕の家へ引越し、一緒に暮らし、役割分担を決める。
すこぶる順調に過ぎていく日々・・そんな日々がずっと続いていくと思っていた僕。
しかし、彼女の体調に異変が起きて-
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結論から言えば、王道な「彼女が死んじゃう」話です。
でも、セカチューみたいに過去を引きずってうじうじ過去を思い出すとかではないし、昨今の映画に多い突然に襲う彼女の死・・みたいな安易なものでもない。
ゆるやかに、しかし少しずつ病魔が彼女に忍び寄る。
けれど、彼女が何処までも気丈なのだ。
何ていうか、そこが違うんですよね。他の作品とは。
物語の前半の、彼女の温かさとの対比が鮮やかで、だからこそ痛い。
泣きはしない、けれど・・何か特別な思いを読み手に残してくれる作品だった。
ちなみに、文庫版の解説は我らが(笑)島本理生さんでした。
また新刊が出ていてびっくりしたよ。
サイン本が欲しい。
サイン本が欲しい。