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はるがいったら

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気が付けば他人のファッションチェックまでしている、完璧主義者の姉。何事も、そつなくこなすが熱くなれない「いい子」な弟。二人の間に横たわるのは、介護され何とか生きる老いぼれ犬。どこかが行き過ぎで、何かが足りない姉弟の物語。第18回小説すばる新人賞受賞作。

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飛鳥井千砂さんという作家さんの本です。

地元の図書館で、何か良さそうな本はないかな・・と思って探していると、気になるタイトル。
で、装丁もなかなか良いじゃないですか。

しかも私が好きな小説すばる新人賞の受賞作ですって。

村山由佳さん、関口尚さん・・とこの賞を取っている作家の本が好きらしいんですよね。
自分。

多分、嫌いじゃないだろう・・むしろ好きだろう・・そう思って読んでみました。

はい、好きです。
多分、私が書いている小説と感じが似ています。

まだ拙い感じもあるけど、私が書きたい雰囲気と似ています。
好きです。

この作家さんとは、歳も4つか5つくらいしか変わらないらしい。

雰囲気としては、初期の島本理生のような、青山七恵のような。
島本さん好きは多分好きですよ、この人。
お薦めです。

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23歳の姉と、18歳の弟。

両親は離婚し、姉は母親と暮らしている。
弟は父と、その再婚相手の母と連れ子の兄と4人で暮らしている。

時々連絡を取り合い、交流のある姉弟

姉の園は、デパートで総合受付の仕事をしている。
痩せすぎの体、長身、洋服やアクセサリーなど自分を着飾ることが好きな姉。
特徴的な少しつりあがり気味の目だけが、弟と似ていない。

予定が狂わされること、いつもと違う時間に起きること、計画していたことを突然キャンセルされること・・そういう類の事が嫌いだ。

完璧主義な園が、唯一予定を狂わされても嫌な気持ちにならないのは、幼馴染で好きな人である恭ちゃんだけだ。

恭ちゃんには、婚約者がいるが・・それを割り切って園は恭ちゃんと恋人めいた関係を続けていた・・

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弟の、行は昔から体が弱く、高校も1年留年している。
将来何を目指したいのか、大学を私立にするのか国立にするのかで悩んでいる。

行の元には、一匹のハルという老犬がいる。

子供の頃から買っていた犬は、大分歳を取り、今では自分で立つ事もままならない。

そんな老犬の介護をしながら、日々生活をしている。

行はいつからか、「まあ、こんなもんなのかな・・」と自分に納得させて物事にあまり動揺しないようになっていた。

父と母が離婚し、父と姉が険悪なことも、自分が体が弱くて留年したことも、姉と恭ちゃんの仲が怪しいと思うのも・・

気にはするけれど、自分の中で解決させてしまうのだ。

よく言えば「人のいい」、悪く言えば「気の弱そう」な目は、やはり姉とはその部分だけが似ていないのだった。

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老犬、ハルが二人の姉弟の関係を繋ぐ。

そこに、姉サイド・弟サイドの語りが加わって、ゆったりと流れていく物語。

姉に嫌がらせをする犯人、職場での複雑な人間関係、そして恭ちゃんとの複雑な関係。
両親の離婚によって、複雑になった家族関係・・


姉の性格や外見とは真逆な弟。

女の視点、姉の視点。
男の視点、弟の視点。

様々な視点から見ると、繋がっている話も、少しばかり奥深く思えてきます。

事件があるわけじゃないのです。
でも、日常に転がっていそうな、何気ない話・・私は結構好きでした。