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私が語りはじめた彼は

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私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう?大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘―それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか…。「私」は、彼の中に何を見ていたのか-

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三浦しをんさんの本です。

これは、予想に反してなかなか面白かったですよ!
ちょっとしたミステリとしても読めるし、恋愛ものとしても読めるし、様々な視点から色々なものが混ざり合ったちょっとした一冊になっています。

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ある大学教授・村川が話の軸となって、村川の本妻、実の娘、助手、義理の娘、実の息子、浮気相手の女・・と様々な視点から6つの話が語られている。

何より面白いのは、当の村川本人が語ることはなく、あくまで第三者(それは、実の家族であったり、愛人であったり、助手であったり、様々なのだが)が彼=村川を語っていくというところが面白い。

また、一話目で村川の助手を務めていた三崎が、村川の当時の妻の家へと尋ねていったときには離婚はまだ成立しておらず、ただ別の愛人と間もなく暮らす事になるであろうという事が描かれていたのだが、最後の話では、20数年後の三崎の姿が描かれている。

村川は、亡くなりそこで見つけたのは当時の妻の娘、村川と血の繋がった娘と、当時の愛人(現今の妻の姿)であり、その対比が面白いのだ。

直接繋がりのなかったように見えたそれぞれの関係が、ちょっとした視点で全然違ったものに見えてくるから不思議であり、また一体この村川という男は、何人の愛人を持ち、血の繋がりのあるものないものを全て含めたら、どれくらいの子供がいたのだろうか?
また、それに関わってきた男女は一体・・?

と考えているとだんだんと混乱してきて、思わず相関図でも書いてやろうか?などと思ってしまうくらいなのだ。

それほどに、奥が深く引き込まれる話だった。

こういうサイドストーリーみたいなのって、実は結構好きなのです。