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I LOVE YOU

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祥伝社創立35周年記念特別出版。愛してる、って言葉だけじゃ足りない(オール書下ろし)。恋愛には物語がある。初めて異性を意識しはじめたとき、相手とのあいだに微妙な距離感を感じたとき、初恋の同級生との再会を果たしたとき、そして別れを予感したとき…。さまざまな断片から生まれるストーリーを、現在もっとも注目を集める男性作家たちが紡ぐ、至高の恋愛アンソロジー

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この4人の作家が書いているアンソロジーと言われたら、興味を持たない訳にはいきませんでした。

そして・・想像以上に良かった。

アンソロジーって、結局目当ての作家の作品も案外微妙だったりすることが多くて、がっかりしてばかりだったのでこれは読んで得した気がしましたよ!

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透明ポーラーベア / 伊坂幸太郎
魔法のボタン / 石田衣良
卒業写真 / 市川拓司
百瀬、こっちを向いて / 中田永一
突き抜けろ /中村航
Sidewalk Talk / 本多孝好


特に、伊坂幸太郎さんの話と中田永一さん(初めて読みました)の話がお気に入りです。


透明ポーラーベア


恋人と来ていた動物園で、偶然に再会した姉の元彼氏の富樫さん。

富樫さんの横には、彼女と思われる女性がいてそれでも富樫さんは優樹に気付いて声をかけてくれる。

優樹にとって、姉の歴代の彼氏の中で特に慕っていたのがこの富樫さんだった。


姉と富樫さんは別れることになり、姉は「ちょっと出かけてこようと思うの」と言って旅に出たきり行方不明になった。

その話は、富樫さんの耳にも届いているようだった。

富樫さんの恋人、芽衣子さんは「シロクマに会いに来た」のだという。

優樹と優樹の姉と、富樫さんにとってシロクマは特別だった。
姉の好きな動物だったので、よくシロクマを目にしては「可愛い可愛い」と言っていたのだ。

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転勤が決まり、彼女と遠距離になることが確定している優樹と、彼女にプロポーズを申し込んだという富樫さん。

それぞれの想いを抱えながら、偶然同じ動物園にやってきた2組のカップルは姉という存在で繋がっている。

そして、更なる偶然が重なるのだ。

偶然でも何でも、確かに繋がっているのだ。

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なんでもない恋の話かと思いきや、そこは伊坂さん流。
粋なつながりを見せてくれます。

そして・・これはもしや・・

アヒルと鴨のコインロッカーに出てきた動物園ではないですか?!

本文にこんなものがあります↓

(サル山の横の区域にいる、レッサーパンダは特に可愛らしかったけれど、ものものしいゲージで囲まれていて、残念だった。以前はそんなものはなかった気がするから、もしかすると、レッサーパンダに手を伸ばしたり、抱えて持って帰ろうとした輩がいたのかもしれない・・)


絶対そうですね(笑)

だから余計に面白いと感じたのかもしれません。


百瀬、こっちを向いて



クラスでも底辺に属する冴えない男のノボル。

命の恩人でもあり、昔から兄のように慕ってきた宮崎先輩とはたまに話す間柄だ。

そんな宮崎先輩には、学校中の人気者で美人で完璧な神林先輩と付き合っているらしい。

しかし、ノボルは偶然宮崎先輩が他の女の子と一緒に歩いている姿を目撃した。


そして、とある事を頼まれたのである。

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宮崎先輩には、神林先輩の他に百瀬という彼女もいたのだ!

神林先輩に疑われているらしい宮崎先輩は、ノボルにあろうことか百瀬の彼氏役を頼んできたのだ。

百瀬とノボルが付き合っていると思わせれば、その疑いの目をそらすことが出来る。
学校でだけ付き合っていると周りに思わせれば、それだけでも効果はあるというものだ。

人間レベル2と自称するノボルと、レベル90以上の宮崎先輩と神林先輩のカップルは、眩しく見える。

先輩の頼みであれば、断る訳にはいかなかった。

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演技の為とは言え、女の子と付き合ったこともないノボルは百瀬と手を繋いだり、一緒に帰ったり会話をするというだけで冷や汗ものだった。

更に、全くといっていいほど共通の話題がない二人は前途多難だったのだが・・

とうとうWデートの誘いが来てしまう。

入念に準備をする二人。


しかしいつしか、ノボルの中で百瀬への想いが芽生え始めて・・・

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豊島さんと自分以外で、自分を底辺だとかレベル2だとか言ってしまう主人公の話を始めて読んだ気がします。

読んだ瞬間に、感情移入をしてしまいました(笑)

皆演技をしているのだけど、実は一番の演技派が神林先輩だった・・という結末の詳しい内容は読んでお試しあれ。

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石田さんの話も、異性として意識などしていなかった関係の男女が少しずつ恋愛対象として意識していく様は可愛らしかったですし、本多さんのいつもながら切ないようで最後は温かい話も良かったです。

でも、市川拓司さん・・
初めて読んだけど、あまり心惹かれないわ。

多分映画を観てもそう想うと思われます。


でも、読んで損しないアンソロジーです。