No-music.No-life

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約束

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親友を突然失った男の子、リストラに晒され、息子に侮蔑されながらも日常に踏みとどまり続ける父、不登校を続ける少年が出会った廃品回収車の老人、女出一つで仕事を抱えながら育てた息子を襲った思いがけない病-
苦しみながら立ち上がり、もういちど人生を歩き出す人々の姿を鮮やかに切り取った短編集-

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石田衣良さんの本です。

文庫の新刊で発売していたので、早速買ってしまった。
最近違う作家の本ばかり読んでいたので、ようやく帰ってきたというか(笑)

久々の石田衣良さんでしたが・・これは、泣ける話を集めたものだったらしい。

泣けるというか、再生へと向かう話というか。

不覚にも、一話目でなきそうになってしまいました。
映画でしか最近泣けない私が、石田さんの本で泣きそうになったのは既に2度目のことです。

心が洗われる思いでした。
そんな素敵な短編集です。

約束
青いエグジット
天国のベル
冬のライダー
夕日へ続く道
ひとり桜
ハートストーン


お薦めは、約束天国のベル夕日へ続く道ハートストーンです。

特に表題作の約束は、読み始めから泣きそうになりました。


「ほんとうはぼくが死ねばよかった。・・ぼくなんてあってもなくてもいいザコカードだけど、ヨウジは最高のプラチナカードでした。・・ヨウジが死んじゃったのに、ぼくが生きててごめんなさい」


自分の憧れであり、クラスの皆からも慕われていた英雄に思っていた親友、ヨウジが通り魔に刺されて死んだ。
カンタを守る為、カンタを突き飛ばし運悪く通り魔に刺されてカンタの目の前で死んでしまったのだ。


自分にとって、英雄のようだった親友の存在が永遠に失われた・・
自分を守る為に。自分なんかの為に。

食べ物の味が分からなくなり、校庭の砂を口に入れる。
周りの皆が心配し、カウンセラーがつき、一度は安定する精神もあふれ出す感情を止めることは出来ず、爆発する。

どうして自分なんかが生き残ってしまったのだろう?

カンタは、空虚な思いを抱えたまま自分の死に場所を求めてさ迷い歩く。

たどり着いたのは、通学路だった。
そこでヨウジが刺されて死んだのだ。

カッターナイフを手にし、正門へと辿りつくと突然ヨウジがあらわれた。

そして、おもむろにあの事件の真相を語るのだった。


「みんなが離れていっても、カンタは残っていてくれる。そうしたら、ふたりで遊んで大人になればいいやって、いつも思っていた-カンタには自分自身とぼくのために生きてほしい。ぼくはカンタともっと生きたいよ」

ヨウジはそう言って、カンタも一緒に沢山泣いた。

そしてカンタは-

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小学生にして生きる事に絶望した男の子・カンタと、憧れだった親友の死。

池田小の事件をモチーフに書かれた一作だそうです。

生きる意味とは何か?を問いかけられたような気がして、胸が熱くなりました。

心が洗われる一冊です。
ぜひ。