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天国はまだ遠く

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仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語-

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瀬尾まいこさんの本です。

とても薄い文庫だったので、東京に行くまでの1時間半位の電車の中で読み終えてしまいました。


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23歳の主人公、千鶴は会社での仕事もうまくいかず毎日窒息しそうな苦しい日々を送っていた。
ある日、決意を固め自殺を図ろうと遠くの地、山奥の小さな村へと足を運んだ。
そこはとある村にある民宿。

貯金を全ておろし、医者にもらってとっておいた睡眠薬を一気に飲み込み、いざ自殺を試みたのだが・・
死ぬことができなかった。

それからは空っぽな日々。
毎日村を散策し、規則正しい生活を送る。

民宿の田村さんの大雑把な生き方に、少しずつ心を開きはじめる千鶴。

自然と共存し、自給自足の生活を送る田村さんをうらやましいと思う一方で、少しずつ自分の居場所がここではないという事に気付いて・・

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妙に共感したのは、主人公の歳が同い年で、おまけに仕事がうまくいかないという事が一緒だからみたいだ。

例えばこんな文中の言葉がある。


・・気楽にしようといくらがんばっても、私の頭や身体は深刻に考えすぎてしまう。会社に行かなくてはいけないと考えるだけで、毎朝頭が痛かった。(中略)仕事はまったくうまくいかず、あせればあせるほど、追い込まれていった。そのうち、誰に何も言われなくても、職場にいるだけでみんなから責められているように感じるようになっていた。(中略)・・それなのに、私は会社を休む事もできなかった。解決法は見つからず、ただただ日々をうまくやり過ごすだけの生活だった。



とここまで読むと、主人公がどれだけ追い込まれて自殺を考えたのかが分かるだろう。

しかも本人も、「これくらいのことなんかで」自殺するなんてと周りは思うかもしれない・・と理解はしているのだ。
ただ、このギリギリの生活で、親にも友達にも頼ることができなくなってしまった主人公は、一人深刻に悩み続けている。

そんな毎日から開放されたいと自殺という選択をしたものの、死にきれず、何もしない日々を民宿で過ごしていく。

そして、民宿の田村さんの適度な緩さと大雑把さが、千鶴の中で何かを変えていく。

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これは、再生の物語だ。

一度死んで、生き返った主人公。
リセットすることは、必要なことなんだろう。

ギリギリまで悩んでいる人は、思い切ってゆっくり何もしない時間をとってみるのもいいかもしれない。
まあそれが出来たら苦労はしないのだけど。

でも、私もここまで悩んではいないけど、似たようなものなので・・
この本は、こうやって日々に悩んでいる人にぜひ読んでもらいたい。

すると、少し気分が落ち着いて明日から頑張ろうという気になってこないだろうか?

・・私も、今仕事の壁にぶちあたっていて上手くいかなくて自分自身にもどかしさを感じている。
だからこの本は、自分を見ているみたいで痛くて、だけど優しく心に響いた。


それとこの本、映画化するらしいのでちょっと楽しみ。