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あかね色の風/ラブ・レター

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陸上部で怪我をして自棄になっている遠子のクラスに転校生の千絵がやってきた。複雑な家庭の事情も屈託なく話す千絵に、遠子は不思議な魅力を感じる。二人の友情と成長を描いた「あかね色の風」。大好きなクラスメイトに手紙を出そうとする愛美の純粋な想いを綴った「ラブ・レター」。思春期の少女達の揺れる感情を照らし出す、青春小説の金字塔-

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あさのあつこさんの本です。

これは児童書の類になるようですね。
今回文庫化ということですが、この2作の単行本を見かけた事がないので大分前の作品なのかと。

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2作とも、女の子が主人公です。

あさのさんと言えば、今話題のバッテリーなど魅力的な少年を描く事がとても上手い作家さんですが・・少女を描く事もあります。

ただ、以前のありふれた風景画が何を伝えたかったのかを汲み取れない作品でもあったので・・期待はしていなかったのですが。

今作は児童書ということで、児童書では少女が主人公というのも結構書いているんですよね。

そのせいか、案外違和感なくするりと読めました。

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あかね色の風

小さな地方都市。
開発が進み少しずつ街が活性化してきている中、樹齢三百年の桜の木を見にくる人々も多い。

あるとき、家に千絵という女の子が挨拶にやってきた。

「あっ、白い芙蓉のようだ」

千絵を見た時、遠子はそう思った。

千絵は、複雑な家庭の事情で祖母がいるこの町に引っ越してきたらしい。
千絵の祖母は「仲良くしてくれ」と頼みにきたのだ。

仲良くして、といってすんなり仲良くなれるほど単純なものではないと思いながら、遠子は何となく千絵が気になっていた。

しかし、学校に行っても特に自分の所に話しかけてくるということも少なかった。

遠子は以前陸上をやっていた。
しかし様々な事情が重なり、辞めてしまってからは何となく常に冷めた気持ちを抱えている。

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ある日、思いがけず千絵と接触する機会が出来た。
遠子が所属しているクラブに、千絵が入ってきたのだ。

千絵は化石が好きで、将来そういう仕事に就きたいと考えている。

必要以上にベタベタしない、だけどたまに二人で会って化石の話を聞いたり、山に行ったり・・

そんな千絵との関係で、少しずつ遠子自身が変わっていく-

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バッテリーの原点とも言える主人公、遠子。
確かに女版、原田巧なのかもしれません。

周りからは、一見距離を置いているだけの冷めた子供に思われそうな子なのだけど・・
陸上を辞めた理由というのは、もっと深いものなんだろうなと思いました。

それを汲み取ってあげる大人がいないのも何とも悲しいですが。

千絵も家庭の事情が複雑ながら、優しくて真っ直ぐな子で・・それが嬉しく思いました。


ラブ・レター


ベタな話かと思ったけど、そんなことはなかった。

最近気になる隣の席の男の子楽くんへのほのかな想いを、手紙につづる。
そしてそれを渡すという・・まあそれだけの話なのですが。

主人公愛美の幼いながらも、色々な考えを持っている所に感心してしまいますし。

友達の誘いがきっかけでラブレターを書こうと決めてから、なかなか言葉が出てこなくて手紙を書くことに時間がかかってしまったりとか。

高校生の姉とその彼氏の恋にドキドキしたり、学んだりだとか。

何より、楽くんへのほのかな想いがこちらにまで伝わってきて何とも微笑ましい。

頭の中で、楽くんへ伝えるべく言葉を考えている愛美が可愛いです。

最後は手紙を無事に渡すのですが、その後どうなったのか?なんていうのはいらん想像なんでしょうね。

王道だけど、恋の話ってあさのさんはあまり描いていないと思うので、こういう話もありだなあと思いました。

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二作を通して読んでみて、やっぱり児童書はいいなと改めて感じました。

温かい気持ちになりたい人は、ぜひ。