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卒業。ピュアフルアンソロジー

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先日購入したら、乱丁だったというこの本。

送り返したら、まあすぐ代品が届いたんですけどね。

・・あまりにも味気ない。

写真を見て頂けると分かるでしょうか?
ワープロ打ちの詫び状と、郵送料80円切手3枚と代品。

そして詫び状は、たったの6行。

「今後このようなことが起きないように、十二分に配慮してまいりますので」

ということですが、十二分に配慮しているようには思えないあっけなさでした。
こっちは楽しみにして購入してるのに、まして乱丁だったというのに・・せめて手書きとか誠意をみせてほしかったです。

図書カード送るとかさ。

・・まあ、内容はそれなりに満足だったからいいけど。
これで最悪だったら身も蓋もないですよ。

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青春未満の胸騒ぎ 「パルパルと青い実の話」/豊島ミホ
一生に一回だけ使えるSOSは・・ 「卒業証書」/大島真寿美
心の中は、期待と不安でシーソーのごとく。 「春の電車」/梨屋アリエ
中学生活を満喫しようと思っていたのに・・ 「神様の祝福」/草野たき
先生と私、二人は最後のバスに乗る。 「君と手をつなぐ」/藤堂絆
二十五年の月日、狂気のような孤独。 「彼女を思い出す」/前川麻子
悪友たちとのコージー・ミステリー 「たぶん、天使は負けない」/若竹七海

+巻末に川嶋あいの「卒業」メッセージを収録

パルパルは、豊島ミホさん的自伝記で感想を書いているのでそちらをどうぞ。

私が好きだと思ったのは、大島真寿美さん(「水の繭」の作家さん)の卒業証書

本命の公立高校の受験に失敗し、特に行きたくもない私立の女子高に行く事が決まってしまった千寿。
卒業式が終わり、何処か遠くに家出をしようと決意し二両しかない電車に乗り込んだ。
するとその電車には、人気者でサッカーで有名な名門校への進学が決まっている小田切も乗っていた。

何となく同じ駅で降り立つと、二人は「海」へと足を向ける。

会話もしたことがなかった二人が、お互いの将来への不安や葛藤をさらけだす。

そして、小田切がいう。

「ギリギリになったら、SOSを送るから、今日みたいにしゃべらね?」

そしてお互いの卒業証書を交換する。
有効期限なしの、約束を交わして・・・

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とても短い話なのですが、一番印象に残りました。
あの約束から何年も経っても、忘れずにそしていつかその時がきたら使おうと思い続けている千寿ときっと同じことを考えながら毎日頑張っているのであろう小田切

真相は明かされないけれど、きっとそうなのでは?と思える終わり方がとても素敵でした。


あとは、藤堂絆さんの君と手をつなぐ

不思議な余韻の残る話でした。


夏期講習で出会った不思議な魅力を持った「手」を持つ先生。
白い手の甲、丸く整えられた爪、少しだけしわのできる関節、薄水色のワイシャツの袖口。かすかにいいにおい・・
それから、一気に先生に夢中になった。

それでも、特別仲良くなった訳ではない。

偶然隣り合わせたバスの席。
気付けば先生の手を捜し当てていた。

そしてそっとやわらかく握り返してきた先生。

先生が好きだとか、そういう特別な気持ちとも違った。
先生には彼女がいるらしい。
でもそれは清潔で美しいものに思えた。

そして先生との別れはやってくる。
先生が塾をやめるというのだ。

そして先生の腕時計を盗んだ・・
先生をさらっていく時間。それを刻むものを排除したいと思って・・

そして、別れはやってくる-

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今までにないタイプの余韻を残す作家さんですね。
第1回Yahoo!JAPAN文学賞受賞者の方らしいです。

何かを失うことをさらりと、だけどしっかり胸に響いてくる物語を書く人だと思いました。


全体的に、なかなかいいアンソロジーだったと思います。
だから尚更、出版社の対応が悲しいです。

きっとよくあることなんでしょうね。乱丁なんて。