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最後の息子

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新宿でオカマの「閻魔」ちゃんと同棲して、時々はガールフレンドとも会いながら、気楽なモラトリアムの日々を過ごす「ぼく」のビデオ日記に残された映像とは…。第84回文学界新人賞を受賞した表題作の他に、長崎の高校水泳部員たちを爽やかに描いた「Water」、「破片」も収録。爽快感200%、とってもキュートな青春小説-

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るいさんにお借りした吉田修一さん三部作(笑)の最後の1冊。

前回のパークライフがあまり理解出来ない部分も多かったので、逆にこの本はすんなり読めました。

最後の息子
破片
Water

の三編が収録されています。



タイトルの最後の息子というのが理解出来なかったのですが、そういうことか・・とわかったような分からなかったような。

オカマの閻魔ちゃんと同棲している「ぼく」の日常を時にコミカルに時にシリアスに描きながら、展開されていく物語、と言う感じでしょうか。

で、またまたビデオカメラで撮影するというのが題材になっているのですが、日曜日たちの短編の中でも出てきたこれに何か作者の意図があるのでしょうか?

私はどうもこう・・撮影=怪しいというイメージしか持てなくて。
「夢を与える」を読んだせいか?

ただ、主人公「ぼく」が取り貯めてきたビデオを見返すという過去を辿っているのには意味がちゃんとあって、そこに友人の死だとか、閻魔ちゃんとの気楽な日々だとか、昔の恋人との日々だとかが入っていくと何故か分からないけれど、すっと物語が頭に入ってきて意外にページが進んだりしました。


破片

この話だけは唯一分からぬまま終わってしまったのですが。
実家の酒屋を手伝う弟と、東京で彼女と同棲している兄の話が軸になっていて。

その兄が実家に帰省し、仕事を手伝っていく中で弟がとある飲み屋の女性に入れ込んでいる事を知る。

弟は昔から女に惚れると何処か猛突進してしまうところがあり、今回もそんな予感を思わせながら物語が展開していくのですが。

どうにもこうにも、登場人物がごちゃごちゃしているというか誰がどの人で、この人が誰で・・と頭の中でこんがらがってしまってどうにもなりませんでした。

女性を助けている、と多分自意識過剰になっている弟を理解できないせいもあったのかも。
こういう人は、きっと根は真面目でいいやつなだけに惚れられたら大変なんでしょうね・・

読みづらさを感じたのは、この弟を好きになれなかったのが原因かもしれません。


Water


「破片」と同じ酒屋の息子という設定でも、高校生・そして水泳に青春をかける男の子が主人公となればがぜん面白さが増します。

水泳部の最後の大会に向け、ライバルとの距離を少しでも縮めたいと日々練習に取り組む主人公。

兄はバイク事故で亡くなり、そのショックから母は主人公の友達を兄だと勘違いしたり、誰かに事故の話をされたりすると、手をつけられない程暴れたりする。

友人の若い母に抱く微妙な気持ちや、男の子特有の性への憧れや妄想。
友人の彼女への淡い想い。信じられないような相談。

そして何よりその泳ぎに対する情熱というか、努力がみずみずしく描かれていてとてもよかった!

スポーツ青春ものではないので、スポットは男の子達の友情と恋とその心情なのだけれど、水泳モノの青春小説でも十分通用すると思う。

こういう路線でも吉田さんはいけるのでは?なんて思いました。
個人的に読んでみたいです。

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という訳で、3冊も貸していただいたるいさんに感謝です☆
ありがとうございました。


後は・・時間があればバッテリーの6巻が出たので、1巻から改めて読み直して感想を書きたいと思っています。