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エンド・ゲーム

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裏返されたら、どうなる?正体不明の存在「あれ」と戦い続けてきた一家。最後のプレイヤーとなった娘が誘い込まれたのは、罠と嘘の迷宮だった-

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恩田陸さんの常野物語シリーズです。


『常野物語』の「オセロゲーム」に出てきた拝島一家。
ある不思議な能力を持ち、あれと戦い続けてきた。

「裏返される」か「裏返せる」のか。

終わりのないオセロゲーム。

母-瑛子が会社の慰安旅行に出かけ、娘の時子も大学のゼミの旅行が重なった時。
母が旅行先で、眠ったままの状態になっているという一報が届く。

駆けつけた時子は、母の深く眠っているだけで目覚めないという不可解な状況に混乱する。

母は、「裏返された」のか?

帰宅したときに感じた違和感。
冷蔵庫に貼り付けられていたメモが、なくなっていたこと。

それは、「裏返された」父が「いざというときに掛けろ」と言い、残していったメモだった。
父が裏返された時にもかけずにいたその番号に、母は電話をし「裏返された」のだろうか?

それでも、ついにその電話番号に電話をかけた時子。

そして「火浦」という人間と、指定された場所・日時に会うことになったのだ-

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そこにいたのは、黒い輪郭を持った、黒曜石のような目をした青年だった。

彼は、自分が洗濯屋だと言った。

「洗って、叩いて、乾かす。そして白くする」

不思議な暗示のように、彼の言葉に引き込まれていく。

「さあ、見てごらんよ」

床には、ボウリングのピンがずらりと並んでいた。
生き物のように。
鈍い光を放って。

裏返されてしまう

火浦は、敵なのか?味方なのか?

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母の瑛子もまた、不思議な老婦人からこんな言葉をかけられた。

「私、ご主人を今年の夏に見ました-『洗濯屋』のところで」

動揺する瑛子。
そして、老婦人は言う。

「あの番号に電話してください」


その日から、ずっと頭にもたれかかる不安が消えない。
念のため、脳ドックで検査をしてもらったものの、全く異常は見当たらなかったことに、落胆もしていた。

もしかすれば、自分の脳には常人と異なる部分があるのではないかと疑っていたのに・・。

この能力と宿命を、ただの自分を守るための作り話だったのではないか?
夫に捨てられ、子供と二人残された自分が作った・・

しかし、娘の時子にも「あれ」が見え、「裏返す」能力があることは事実だ。
悲しいけれど事実だった・・

そして、瑛子はあの番号に電話をかけた。


指定された長野の『洗濯屋』の店に向かう途中、あの黒い目をした青年が言った。

「ご主人は『裏返されて』などいません」


どういうことなのか?
夫は、「裏返された」のではなかったのか?

色々な感情が交差しながらも、店へと向かっていく。

そして、老婦人が不思議な風呂敷を広げていった。

「さあ、これを見るの!」

瞬間、瑛子は意識を失っていった-


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一族の中でも、「裏返す」強い能力を持った夫と、同じ能力を持った瑛子。

薄く、広く、なるべく在野に散っていくように。

という不文律に反すると、結婚を反対されていた二人。

しかし、似ているからこそ惹かれあったのは事実だ。

そして、親族の反対を押し切って一緒になった。

娘、時子にもその「裏返す」力が備わってしまう事も気付かずに・・。


「裏返された」父。
「裏返された」?から眠ったまま目覚めない母。

たった一人残ってしまった時子。

敵なのか味方なのか分からない火浦。

そして、衝撃の事実・・!

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昨日の夜から読み始めて、次の日になるまで読みふけってしまいました。

前回の蒲公英草紙とはまた違った話でした。

現代の、SFにも似た「不思議な」話でした。

めまぐるしくスピーディーに展開されるストーリーに、どんどん引き込まれていきました。
はっきりとしていくその事実に、驚き戸惑い、次が気になって仕方がなかったです。

結末は、未だにちゃんと理解できていないのですが・・

火浦が素敵でした(笑)

常野物語はまだ続くのでしょうか?
個人的には、色々な話を読んでみたいです。