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Base Ball Bear 「『夕方ジェネレーション』から『C』へ」

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2006年の音楽シーンを振り返ってみると、実に様々なアーティストが飛躍を遂げた一年だったように思う。
2005年、「粉雪」がロングヒットし、3rdアルバム「HORIZON」を発表、人気アーティストしてその地位を確立したレミオロメン
ガールズバンドとしても注目を集め、シングル「シャングリラ」がヒットチャートを賑わせたチャットモンチー
また、待望の3rdアルバム「alfred and cavity」を発表したthe band apart。安定した音・ジャンルに捉われない自由であり、多彩な楽曲を収録した一枚は彼らの実力と人気を改めて私達に知らしめてくれた。
更に、要注目のRADWIMPSELLEGARDENの活躍は、2006年の音楽シーンを語る上で外せない所であろう。

しかし、今挙げたアーティストだけでは終わらない。
2006年に飛躍を遂げたアーティストがもう一組いることを忘れて欲しくない。

そのアーティストとは、2006年1月にバンドBについてをリリースし4月にミニアルムGIRL FRIENDでメジャーデビューを果たしたBase Ball Bearである。
更に6月にシングル「ELECTRIC SUMMER」、10月にもシングル「STAND BY ME」をリリースし、翌月11月に待望のメジャー1stアルバムCを発表・・という一年にこれだけのCDリリースを成し遂げ、短期間でバンド名を一気に世に広めたまさに彼らの年だったと言っても過言ではないと私は思っている。

2001年秋、ボーカルの小出祐介が高校の文化祭に出演する際にメンバーを集め、そのライブが成功。2002年に正式にバンドを結成(ギター・湯浅将平/ベース・関根史織/ドラム・堀ノ内大介)。
高校在学中に、下北沢・渋谷を中心としたライブ活動を精力的に行う。
翌2003年、1stミニアルバム「夕方ジェネレーション」をリリース。18歳にしてその若々しいサウンドながら、完成度の高い楽曲が大きな話題となる。
更に1stシングル「YUME is VISION」、2005年にはアルバム「HIGH COLOR TIMES」をリリースした。
また、ベースの関根は2005年夏公開の映画「リンダリンダリンダ」にてガールズバンドの一人として主演の一人に抜擢された。
そして2006年に待望のメジャーデビューを果たした。

私が彼らを知ったのは、無名アーティストを見つけてくるのが得意な友人から教えてもらったからなのだが・・夕方ジェネレーションの際から一応は彼らの音を知ってはいたのである。
丁度レミオロメンが1stアルバム「朝顔」を発表し、ROCKIN‘ ON JAPAN誌の表紙を飾った頃。
注目のニューカマーとして、同じくニューカマーとして紹介されていたランクヘッドの次のページに彼らは紹介されていた。

その記事を読み、友人は早速彼らの音源を買い、私は記事を見る前にランクヘッドの音源を買っていたというわけである。
どちらが先にミュージックシーンを賑わすのか?
それは私達のどちらにも分かるものではなかった。

その記事の中で鹿野淳氏はこう書いている-
「すべてがめいいっぱい汗ばんでいるのに、透明に冷めていく感じが伝わってくる」
と。

そしてランクヘッドの記事では、兵庫慎司氏がこう書いている-
「脳内の、己の、この世の、不幸や悲しみや徒労感や絶望の正体を、その根源を声と言葉とメロディとギターとリズムで何とかして探り当ててやろうとするギターロックを欲している人はただちに聴いてほしい」
と。

当時Base Ball Bearが平均年齢18歳。ランクヘッドが平均年齢23歳の頃だった。


しかし、ここでふとした疑問にぶち当たった。
セールス的にはまだまだ及ばないにしても、どうして両バンド共同じ下北沢で活躍していたにも関わらず、ランクヘッドに比べてBase Ball Bearはあまり知られていなかったのか?

本当に最近のことだと思う。音楽ファン全体に彼らの名前が知られていったのは。
それに比べると、ランクヘッドという名前は既に音楽ファンの中で知れ渡っており、また着々と彼らは地位を確立しつつあるように思う。

当時10代と20代だった、という違いこそあるものの年齢的にはそう変わらなかったはずだ。
では何故だろう?

Base Ball Bearは、度々ナンバーガールSUPERCARと比較される。
現に、少なからず影響を受けていることをメンバー自身も話している。

そう、彼らはナンバーガールSUPERCARを聴いていた世代の新たな次世代アーティストだと言っても良い。
私自身も音楽に目覚めるのが若干遅かったのだが、年齢的には彼らと一つ二つの差である。
だからこそ分かる。
彼らはその二つのバンドをリアルタイムで聴いており、解散までを知っている。つまり、極端な言い方だがナンバーガールSUPERCARと共に青春時代を過ごしたということになる。

そう考えると、ランクヘッドと音楽の方向性が違ってくるのは一目瞭然である。
現に、メンバーが18歳の頃に発表した音源の青々しさ。また、これらの単語を見ると10代(学生)であることを深く再認識されるのである。

「田園風景」「海」「潮騒」「少女」「少年」「君色」「思春期」「渋谷」「ノスタルジア」「文庫本」「夕日」「夏」「恋」「愛」「海」・・

特に「少年」「少女」という単語が際立ち、それを「愛」だの「恋」だの「潮騒」だのに絡めて何気ない顔をして唄ってしまう・・。
そんな不思議な魅力を持った曲を、彼らはさらりと作ってしまう。

多分、彼らがどんどん売れて行き、遠くに行ってしまったとしてもSAYONARA-NOSTALGIA極彩色イマジネイションを聞いた時の衝撃を忘れられないだろうと私は思う。

18歳の衝動、とでも言おうか?
夕方ジェネレーションの1曲目であるSAYONARA-NOSTALGIA極彩色イマジネイションを、久しぶりにバンドBについてで聞いた時、またしても体中が総毛立つような感覚に襲われてしまって参った。
初めて彼らの楽曲を聴いたとき、一枚を通して聴いても得られなかった感動をこの冒頭の一曲で瞬時に得てしまったとでも言ったら伝わるだろうか?
どうしても、ミニアルバムを1枚聴いただけでは彼らの魅力を十分に感じる事が出来なかったというのに。
それは、多分私がまだ10代であったことが原因なのか。
それとも「学校」という枠から「会社」という枠に移行してしまったから得られなかったのかもしれないが、それでもこの2つの曲だけは私の脳天を刺激した。
10代特有の荒々しさ、衝動・・そんなものではない。妙に大人びて、文学的な歌詞と、何処か懐かしさを感じるその哀愁漂うメロディーライン。
それでいて、今までの若手バンドにはない何処か彼らだけの音を確立してくれそうな雰囲気。
しかしまだその時点では、私は気付かなかったのだ。
彼らの無限の可能性に。

そしてメジャーデビューが決定し、その頃からようやくCDを購入することを決めた(いつも友人に借りていた)私は、今までの自分に後悔することになるのである。


2006年4月。メジャーデビューミニアルバムGIRL FRIENDを聴いた瞬間に自身が、妙に脱力したのを覚えている。

「何だこれは・・」

と思ったのと同時に、どうしてあの時(夕方ジェネレーションを聴いた時の事だ)に彼らの曲を聴きこんでいなかったのか?
どうしてだろう?どうしてだろう?と考えた末、出た結論はこうだった。

はっきり言う。
私は「所詮、10代には本物のギターロックなんて無理なのよ」と何処かで高をくくっていたのである。
それこそ、自分の方が「本物の新世代ギターロックを作り上げていく可能性のあるバンドを見つけることなど無理なのよ」である。
本当にあり得ない。

それからはもう、がむしゃらに彼らを追い続けた。

GIRL FRIENDの一枚は、私にとっても今まで彼らを知らなかったファンにとっても斬新な印象を受けたと思う。
また、10代の頃に作った彼らの曲を知っている者にとっては、あまりにも高い完成度に驚いたのではないだろうか?
完成度・・とひとくくりにするのはあまりにも稚拙すぎるかもしれない。
しかし・・素晴らしいのだ。

冒頭の力強いギター・ベース・ドラムの重なり合う音は、人を一瞬にして惹きつける。
また、その歌詞の世界観も今までのものとは若干異なってきているのが分かる。

「ハートに火をつけてくれよ 君の齧った檸檬くれよ 深海のような口付けを 新世界は渦巻いて」

曲の構成は、至ってシンプルだ。
極端に盛り上がるサビという訳ではない。
しかし・・さらりと一曲を歌い上げてしまう、何か別の・・勢いみたいなものが強く感じられるのだ。
そして気付けば、頭の中でこの歌が心地よく響いているのである。

更に、私の中では3曲目と4曲目が群を抜いて素晴らしいと思っているのだが、特に3曲目の「CITY DANCE」がいい。

摩天楼の背伸び 浸みていく影法師 溺れた人魚たち 四角い青空 涙ぐんだ景色 桜色の飛沫 ほら、ごらん 都市が今、踊り出す

一見すると、色々な単語がいっしょくたになって煩雑な印象を受けるかもしれない。
しかし歌にのせてしまうと、不思議なことに人間も、生き物も、風景や色でさえも、鮮やかで全てのものが踊り出したかのような錯覚に襲われる。

それは、とあるインタビューで小出が語っていたことに比例しているのかもしれない。

「・・自分の中で風景のモチーフとして色々な物が出てきているんですけど、そういう一個一個よりも自分の中の気持ちを何となく書いた言葉の方が強かったりするんですよ」

そして更に、メジャーデビューではこんな気持ちが芽生えてきたと語っている。

「・・自分の中で面白いこと、新しいことをやれるか。そして周囲に受け入れられるような新しい刺激を提供できるかってトコだと思います」

そして彼らはメジャーデビューを機に、バンドのあり方や方向性に具体性を持ち、シンプルでまさに青春の象徴とも言える歌詞と、ロックともポップとも言いきれない中世的な音から少しずつ変化を遂げていったのである。
更に2枚のシングルリリースを経て、11月に待望のメジャー1stアルバムCを発表。そして私は、またもや彼らの進化に衝撃を受けたのである。

まず流れてくるのはバンドBについての冒頭の曲でもあるCRAZY FOR YOUの季節である。
瞬間、私は思わず顔がニヤリとしてしまうのを抑えられずに困ってしまった。
インディーズ時代の名曲たちを収めたそのアルバムバンドBについてと同じ一曲目。
この歌でなければ、何を入れるというの?という挑発的にも思えるその配置。

更にその2曲目に、GIRL FRIENDである。
これには流石に笑いが止まらなくなってしまう。
あまりにも爽快で、たまらなく愉快な気持ちになってしまったからだ。

2へ続く。