懐かしさと切なさあふれる感動長編。20世紀が幕を開け、少女の心は変化の予感にざわめく。折しも村に不思議な一家がやってきて――。
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久々に本を読む時間が出来ました。
歩いて図書館まで行って、かねてから読みたかったこの本をようやく読む事が出来ました。
歩いて図書館まで行って、かねてから読みたかったこの本をようやく読む事が出来ました。
以前読んだ光の帝国 常野物語の中の一編から、常野と言われる一族のとある一家の物語。
光の帝国の時からは、もっと時代を遡った番外編と言うべきでしょうか?
光の帝国の時からは、もっと時代を遡った番外編と言うべきでしょうか?
久々に、胸が熱くなりました。
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ある老女の回想、という形で語られる物語。
老女がずっと昔少女だった頃。
老女がずっと昔少女だった頃。
日清戦争の頃です。
老女-峰子は日記をつけていました。その日記の名前を「蒲公英草紙」と名づけ、今でもあの甘やかな少女時代を思い出すのです。
とある農村地帯。
槙村家という古くから続く名家があり、県内でも有名な集落でした。
槙村家という古くから続く名家があり、県内でも有名な集落でした。
常に槙村のお屋敷には、お客様がひっきりなしに訪れていました。
その敷地のすぐ傍に住んでいた峰子の父は、医師をしており槙村家のかかりつけの医者でもあったのでした。
その敷地のすぐ傍に住んでいた峰子の父は、医師をしており槙村家のかかりつけの医者でもあったのでした。
槙村の家には十七代当主の旦那様と、大層美しくきっぷのよい奥様、気品のある顔立ちなのに、つんとした所のある長女、貴子様と奥様似の物腰の柔らかく聡明な長男の清隆様、やんちゃでいつも峰子に意地悪をする次男の廣隆様、おっとりとして素直な三男の光隆様、そして次女で体の弱い聡子様がいました。
その末っ子で病弱な聡子様の話し相手になってくれという父からの頼みで、お屋敷に出入りすることになった峰子。
最初は、また廣隆様にいじめられるのでは?
という思いがあり気が進まなかった峰子だったが(実際、廣隆様からいじめに近い歓迎を受けて絶望していた)相手をする聡子様のあまりにもイメージとは違う光が射してきたかのような印象を受けたことが幸福な少女時代の幕開けになったのです。
という思いがあり気が進まなかった峰子だったが(実際、廣隆様からいじめに近い歓迎を受けて絶望していた)相手をする聡子様のあまりにもイメージとは違う光が射してきたかのような印象を受けたことが幸福な少女時代の幕開けになったのです。
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お屋敷には、沢山の人々がいました。
不思議な発明をする池端先生。
不思議な発明をする池端先生。
西洋の雰囲気を漂わせた椎名馨様。本物みたいな素晴らしい絵を描く人です。
そして仏師であったという永慶様。何かがあったらしく、いつも苦しそうな表情を浮かべています。
そして仏師であったという永慶様。何かがあったらしく、いつも苦しそうな表情を浮かべています。
椎名様と永慶様は、それぞれ違った聡子様の絵を描くのです。
そして、当の聡子様は時々不思議なことを言うのです。
この先に起こることがわかっているとでもいうような。
この先に起こることがわかっているとでもいうような。
「誰かお客様がいらしたような気がしたのです。三人?四人かしら」
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とある日、峰子は赤い凧を見たのです。
そして、不思議な呪文のような言葉。
そして、不思議な呪文のような言葉。
かくてぞ はなをめで とりをうらやみ かすみをあはれび つゆをかなしぶこころ・・
幼い男の子と、女の子が話しているのも聴こえます。
兄弟でしょうか?
兄弟でしょうか?
兄弟は、槙村のお屋敷へとやってきました。
そしてその後、その兄弟の父母がやってきて・・。
そしてその後、その兄弟の父母がやってきて・・。
その一家-春田家の葉太郎さんという方が、旦那様の友達だということでした。
それが、不思議な雰囲気を持った一家との出会いでした。
それが、不思議な雰囲気を持った一家との出会いでした。
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輝かしく、はかない少女時代。
遥か昔の「常野」一族との関わり。
不思議な、春田一家。
不思議な、春田一家。
槙村の人々と、それに関わる人、そして春田家の繋がり・・
そのどれもが輝いていて、かけがえのない日々でした。
しかし、とある事件が起こったのです・・
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もう、後半は胸が苦しくて溜まりませんでした。
聡子様の、何と真っ直ぐで芯の強いこと!
聡子様の、何と真っ直ぐで芯の強いこと!
峰子の深い悲しみがこちらにも伝わってきて、悲しいのに・・。
それでも常野の一族-春田家の人間がいたからこそ、救われた事。
それでも常野の一族-春田家の人間がいたからこそ、救われた事。
人間はすぐに忘れてしまう生き物だ。
だからこそ、常野一族という人間たちによって忘れないように記憶を「しまう」人間も存在するのかもしれない。
だからこそ、常野一族という人間たちによって忘れないように記憶を「しまう」人間も存在するのかもしれない。
胸が熱く、切なく・・
それでもこんなにも真っ直ぐな気持ちになれるのは、常野一族の生き様のお陰なのかもしれません。
それでもこんなにも真っ直ぐな気持ちになれるのは、常野一族の生き様のお陰なのかもしれません。
この一冊は久々に良かったです!