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ナラタージュ

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お願いだから、私を壊して。帰れないところまで連れていって見捨てて。あなたにはそうする義務がある・・・・
壊れるまでに張りつめた気持ち。ごまかすことも、そらすこともできない―二十歳の恋。これからもずっと同じ痛みを繰り返し、その苦しさと引き換えに帰ることができるのだろう。あの薄暗かった雨の廊下に。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

島本理生さんの最新作です。

綿矢りささん、金原ひとみさんら若い作家達が次々と芥川賞を受賞していますが、この島本理生さんも芥川賞候補作や野間文芸新人賞に最年少で選ばれたりしている実力派です。

綿矢りささんの作品も好きです。
しかし、島本理生さんも凄いんです。

「シルエット」、「生まれる森」、「リトル・バイ・リトル」の次はこの「ナラタージュ」です。
主人公は二十歳の大学生。
高校時代に出合った先生との恋。
お互いに惹かれあいながら、それでも決して一つになることはない。

過去にしようとしても出来ない想いと、現在進行形で進んでいると信じて疑わなかった恋。
色々な想いが重なり合い、ラストで涙します。

個人的に印象に残ったシーンは、主人公に想いを寄せる小野君のリアルな気持ちが現実に表れた所とでもいいましょうか。
初めは物語くさいな、というくらいにいい奴なんですよ。
こういう風に付き合っていけたらいいなあ・・と「この付き合い方は理想だ!」って安心して読めるくらい。前半は小野君に気持ちを持っていかれました。
しかし後半・・・びっくりです。
嫉妬の形もここまで来ると寂しくてやりきれないかも。
小野君の気持ちも分からないではないけれど・・。

もう一つは、様子がおかしいなと感じていた主人公の後輩、柚子ちゃんの告白の手紙のシーン。
胸が痛くて、読んでいる途中で何度も本を閉じかけました。
女の子ならば、誰もが起こりうる事件にまきこまれてしまった柚子ちゃん。
そして自らその悲しい自分に別れを告げてしまい・・・

最後は、主人公が先生と離れて何年も経った頃。
三者からふいに先生の自分に対しての想いを聞かされた瞬間・・・

これは名作です。
忘れられない想いを持っている人も、そうでない人も・・きっとラストで心が震えてしまうのではないでしょうか?