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ピュアフル・アンソロジー 夏休み。

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空地に石造りの階段だけがぽっかりと/少女はビー玉と数学が大好き/恋と部活に燃えたけど・・/家出をした友人と田舎へ/海辺の町に越してきた少年は/雨の日は、ぼくの破壊衝動が強くなる・・

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の6人の作家の『夏休み』をモチーフにした短編集。

児童書(?)のピュアフル文庫から創刊されました。

夏の階段/梨屋アリエ
Fragile-こわれもの/石崎洋司
もう森へなんか行かない/石井睦美
川に飛び込む/前川麻子
一人称単数/川島誠
幻想夏/あさのあつこ

『バッテリー』のあさのあつこさんのファンで、とても興味を持った本でした。
チェーン・メール』の石崎洋司さんの作品もありました。

即購入し、読み終えた感想は・・

買って後悔しない一冊だ!

という結論です。
これはお得だし、絶対に読んで後悔しないと太鼓判を押してもいいくらい。

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夏の階段

とある空地に、妙な階段を発見した玉木。
そこには、登りつめた先にあるはずのものが何もない、というへんてこな階段だった。

夏期講習に苛立ちを覚えていた玉木。
しかしながら・・この階段への興味にひきつけられ、思わず登ってしまう。
高校生にもなって・・と思いつつ、どうもその階段に登らずにはいられなかった。

ふと、空地の奥の家のある部屋から美しい女性の姿を見つける。
そしてすぐに年老いた女性が現れ、カーテンを閉められた。

・・家では、いつものように両親が夫婦喧嘩をしている。
その全てのものを遮断するかのように、いつも玉木はイヤホンをつけ、大音量で音楽を聴いている。

何故か、あの家の美しい女性の姿が離れない。

あの女性は一体何者なのか?
これは恋なのか?

そんな事を思っていると、母親が倒れたとの知らせが入り・・

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美しい女性の正体、その家の年老いた女性との交流。

玉木にとって、ちょっと特別な夏休みの話。

思わず微笑んでしまいそうな、読後も爽やかな物語でした。
階段は本当は存在しなくて・・どこか違う世界にいってしまうとか・・
と、安易な想像しか出来ない自分がいました。

ちなみにその想像とは、全然違っていました。

Fragile-こわれもの

数学と勉強が好きなユミは、中学受験の為に入った進学塾で最上位クラスに入った事で、いじめを受けた。
もっとも、今の中学でのいじめに比べればたいしたことはなかったのだけど・・

そんな日々を過ごしてこられたのは、数学とビー玉だった。

いつからだか、ユミはビー玉に魅せられていった。

ある日、数学クラブの顧問に薦められた数学専門の予備校に行ってみたら?と紹介される。

ユミは勿論、その予備校へと通うことにした。

しかしその教室の机の上には、白いカーネーションを生けた赤い一輪挿しが置いてあった。
その席へとある少年、横山が突然、それをゴミ箱へと捨てた。

「つまらない物語がきらいなだけだ」

という言葉を残して。

そして、講師が突然言う。
一学期にクラスにいた生徒が亡くなった、と。

淡々とした言葉。
すぐに授業へと戻ってしまった講師。

この異様な空間は??

亡くなった生徒の謎。
不思議な少年

謎が深まる。
知りたいことばかりが・・

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チェーン・メール」の時と同様、スリル満点でした。
頭が良くてもねたまれたり、競争が激しかったり・・。
大変ですね。。


もう森へなんか行かない

卓の幼馴染、美穂が部屋のすみっこに自分自身のからだで作る小さな三角地帯。
彼女はそこを「森」という。

美穂だけの聖域。
幼稚園の頃からの美穂の「森」

その森が失われる事件が起こってしまった。

卓の好きな茉莉。美穂の親友でもある。

美穂と茉莉・・二人の友情に亀裂が入る出来事。
同時に、卓の失恋が決定づけられてしまう出来事。

失踪した茉莉。
痩せてしまった美穂。

それでも・・
卓は部活だけは通った。
色々なことを思いながら・・

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少しほろ苦いひと夏の出来事。
高校時代に、すこし傷を残して・・それでも卓は部活にうちこむんだろうなあ。

川に飛び込む

少し太めの体型を気にするミナミ。
中学入学後、仲良くなったオッコちゃん。
オッコちゃんはセンスがよく、女の子らしく、若々しく、健康的で男の子にもモテる。

そんなオッコちゃんを、ミナミは好きだった。

ミナミにだけは、特別なことを打ち明けてくれるオッコちゃん。

どうやら、ナンパされた大学生と会ったりしているらしいオッコちゃんが家に帰らないらしい。
翌日、ミナミの家に父に殴られたらしいぐちゃぐちゃの顔をしてオッコちゃんが尋ねてきた。

そしてミナミの母が突然、田舎の祖父の所へ行ってきたら?と提案する。

オッコちゃんと二人、田舎に行く事になったミナミだったが・・。

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オッコちゃんの告白。

数年後のミナミの回想。
遠くの川面のような、あの夏。

一人称単数

川島誠さん(「800」とか書いている人。微妙に気になっていました)の小学生時代の夏休みの話。
私小説

一人称単数で、小説というものを書いてみる。
小学生時代のこと。

一瞬、物語なのかな?と思えてしまう自然さ。
でもこれは作者自身の話なのです。

幻想夏

雨の日は、色々なことを思い出す。
亡くなった祖母が、昔縮緬で作ってくれたテルテルボウズ
何もかも壊してしまいたいという、破壊衝動。

日々思う。
「幸せになっていいのだろうか?」

間接的に、祖母を殺してしまった過去を持つ真人。
祖母は殺されたのだ。
直接的には強盗に。
間接的には、この僕に・・。

祖母に「ありがとう」も「ごめんなさい」も言えなかった真人。
後悔してももう、その祖母はいない。

ある日、過去の事件を彷彿とさせる事件が起こる・・。

「人を殺したものが、幸せになってもいいんですか?」

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あさのさんは、最近こんなミステリーっぽいような小説を好んで書くのかしら?
相変わらず少年の描写が素敵です。


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とまあ。
ざっとの感想で申し訳ないですが。

6つの短編。

読んで後悔はさせません!