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ZOO

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毎日届く恋人の腐乱死体の写真。彼女を殺したのは誰か?「犯人探し」に奔走する男を描く表題作他、書き下ろし新作を含む10編収録。


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乙一さんの本です。

先に映画化され、DVDで見てしまったので出来れば先に原作を読んでおきたかった!!
という悔しい思いをしてしまったくらい、映画は原作に忠実だったのです。

乙一さんの本の中で、唯一読んでいなかった本が古本屋にてついに購入することが出来ました。

一面赤い表紙に白字で「ZOO」
恐いかも・・と、少し恐る恐るページをめくると・・・


☆カザリとヨーコ
血液を探せ!
☆陽だまりの詩
☆SO-far そ・ふぁー
冷たい森の白い家
Closet
神の言葉
☆ZOO
☆SEVEN ROOMS
落ちる飛行機の中で

からなる、10編の短編集です。

うち、映画化されたのが
☆印があるものです。

映画化されたものに関しては、本ブログの「映画の感想」にて記事にしているので、気になる方はぜひ・・

この本に収録されている話は、
乙一らしい意外な結末があったり、少しグロかったり、切なかったり、恐かったり、少しコミカルだったり・・とそれぞれ色々な趣をもった作品であります。

映画化されたものは、大体「不思議な」話だったり、少し背筋が震えるようなものだったり、悲しい話だったりするのですが、それ以外の作品は・・映像化したらかなり恐いんじゃないだろうか?
と思えるものが多い気がしますね。

恐い恐い、と思いつつどんどん読めてしまうのがやはり乙一作品なのでしょう。

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血液を探せ!

この話は、一番コミカルな話でしょう。

事故の後遺症で、傷みを感じなくなってしまった老人がある日気付いたら血だらけの部屋にいた。
なんと、誰かに包丁で刺されたらしい!
輸血用の血液は、同伴の医師の話では持ってきたという。
しかし、その血液が見当たらない・・!

薄れていく意識。
その中で、遺産目当ての妻と二人の息子に血液を探すように老人は言う。
「血液を見つけたものには、全財産をくれてやる」と。

しかし血液は見つからない・・

老人は助かるのか?
刺した犯人は一体誰なのか?

・・・
というかなり死が迫っている状況下、何故か老人はコミカルにツッコミを入れたりしている。
その様が有り得ない!(笑)と思いつつ、笑えてしまって面白かったです。

冷たい森の白い家

わたしは馬小屋で暮らしていた。家はなかった・・

両親を事故でなくし、叔母の家で人間としての扱いを受けず厄介者にされてきた「わたし」。

ある時、兄弟のいじめにより馬に顔を踏みつけられ顔がへこんでしまう。
それでも唯一、兄弟の妹である赤毛の女の子だけは「わたし」と話してくれた。本を読ませてくれた。計算を教えてくれた。

しかしそれも長くは続かない。
叔母により馬小屋からも追い出された。

町にでても自分の顔を見てはいい扱いは受けなかった。
そして森の中でひっそりと暮らすことにした。

人間を殺し、人間をつかって、家を作ることを決めた。

何人もの人を殺し、ついに死んだ人間で作った家を完成させた頃、少女が尋ねてくる。
いなくなった弟を探しているという。
弟の変わりになるから、どうか弟を家に帰してと懇願する少女。

「わたし」はそれを受け入れたのだが・・

ーーー

考えてみると恐い。
死体で出来た家ですよ?

そして一番恐いのがラストです。
どうして不幸な人間というのは、いつまで経っても不幸なのだろう。
悔しさで胸がいっぱいになってしまいました。

Closet

ある日、ミキが義理の弟で作家でもあるリュウジから部屋へと呼び出される。
それはあるミキの重い過去を知り、その話を聞きたいと言う申し出だった。

三分後。
ミキは血のついた灰皿を床に落とした。
そこには、リュウジの死体があった。

このままでは自分が疑われてしまう、そう思い、部屋にあった大きなクローゼットにリュウジの死体を隠した。

殺されたということを、家族に知られたら「自分が」疑われる!
そう思い咄嗟に死体を隠したミキ。

リュウジハコロサレタ」という手紙。
怪しむ妹のフユミ。

犯人は誰なのか?
何の目的なのか?

クローゼットが鍵だ。

ーーー

どうして私はいつも後半まで気付かないのか。
全体的に見れば、いとも簡単に犯人は分かるはずなのに。
答えはもう最初のページから分かってしまうはずなのに・・。

ああ!
って悔しくなりました。この話は。

神の言葉

ペットの猫とサボテンの区別がつかない母は、実は頭のいい人なのである。
それでも、どうしてもそれは直らない。

全ては僕のせいだ。

小さい頃から「おまえの声は美しい」と言われて育ち、ちやほやされ期待され、いい子だと思われて育ってきてしまった。

小学一年生の時だった。
自分の声により、クラスで一番大きく育っていたアサガオを枯らし、自分のアサガオが一番になって褒められた事があった。

それから、自分の声に宿る魔力のような力に気付いてしまった。

生き物全てに対して自分が相手に発した言葉は命令になり、二度と戻る事はない。

自分を取り繕ってきた。
いつしかそんな自分が嫌になった。
「世界中のすべての人間から自分の姿を消すにはどうしたらよいのか?」

声の力でそれを実現させようと考えた僕は・・・

ーーー

恐いです。
始まりの部分では、恐さを感じさせないじゃないですか?
サボテンの話なんかがね。
でも、後半はもうどん底です。
自業自得なんだろうけどね・・。

落ちる飛行機の中で

過去に傷つけられた男に、復習するつもりで東京へと向かった女。
自殺を考えていた男。

偶然飛行機の中で隣合わせた二人・。男から、とある商談をもちかけられた。

飛行機がハイジャックされた。
受験に失敗し、やけになってT大に墜落させ乗客を道連れにして自殺を図った若い男が犯人だった。

墜落して死ぬのか、それとも安楽死を望むのか。

男が差し出したのは、安楽死が出来る注射器だった。

効果が表れるまで30分。
墜落するのは、一時間後。

女は悩む。

ハイジャックが成功したら、間違いなく死ぬ。乗客全員が。
逆に、犯人が取り押さえられたら生き残れる。

女はかける。
ハイジャックが成功するというほうに。

注射をし、安らかな眠りについた女だったが・・・

ーーー

これは!
めちゃくちゃですよ!
結末が予想できませんでした。


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とまあ、そんな感じですが・・
映画化された「SO-far」「SEVEN ROOMS」はラストが切ないですよね。
好きなんですけど。

ハラハラして、恐くなって、展開にドキドキして・・

話が変わると感じ方も全然違うドキドキ感。

かなりお得な一冊ですし、ぜひ皆さんにお薦めしたい短編集です。