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水の繭

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むかしむかしあるところに、私たちが家族だった頃がある―。母と兄、そして父も、私をおいていなくなった。孤独な日常を送っていたとうこのもとに、ある日転がりこんできた従妹の瑠璃。母とともに別居する双子の兄・陸は時々とうこになりかわって暮らすことで、不安定な母の気持ちを落ち着かせていた。近所の廃屋にカフェを作るためにやってきた夫婦や、とうこの祖母。それぞれが大きな喪失を抱えながら、ゆっくり立ち上がっていく-

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大島真寿美さんの本です。

ブログでお世話になっているテイコさんが、記事で紹介していたことで、この本を始めて知りました。

多分、全然聞いたことのない作家さんだったし、タイトルを聞いただけでは購入には至らなかったことでしょう。

何がきっかけか。
そう問われたら、「表紙」と答えると思います。

淡い色で彩られたその表紙は、私の心をぐっと掴んでしまったようなのです。

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しかし、内容は?
CDだって、ジャケ買いで買うと案外期待はずれだったりするように・・
この本だってそうかもしれない、と過剰な期待はしていませんでした。

読み始めてみて、読みやすさに好感を覚えました。
しかし、主人公とうこの家族構成の複雑さに、少々戸惑ってしまいました。

「もしかして、これ、あんまり面白くない?」

と訝しがっていたのもつかの間。

後半からどんどんそれを覆すかのように、物語は展開していきます。

最初はスローペースだったものが、どんどんスピードをあげていくように。

いつしか、主人公とうこの気持ちに入って、物語を読み進めている自分がいました。

読み終えた感想は、なんとも言いがたいですが・・

清々しさ、淡い気持ち、前向きな気持ち・・

色々なものがこみ上げてきました。

特に、とうこと自分自身が似てる部分があって、だからこそ余計に感情移入できたのかもしれません。


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主人公、とうこには双子の兄妹、陸がいる。

しかし、父と母が離婚し、とうこは父に、陸は母に引き取られたきり、離れ離れになっていた二人。

思いがけず、従姉妹の瑠璃がとうこの元に舞い込んできて、昔からの瑠璃のとっておきの空き家に足を運ぶと出来ていた、カフェのようなものに変わっているのに気付く。
そこには遊子さんと茂さんという人がいて、いつしか二人と交流を深めながら・・

とうこと瑠璃が、陸の元へと向かい再開するものの・・冷たくあしらわれ・・
それでも会いにいき・・

と、それぞれの人物たちの絡みがありつつ、物語はいたって淡々としています。

特に大きな事件が起きるわけでもなく。
それでも、とうこたちは確かに前進しながら・・

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淡い淡い気持ちが、胸の中にわいてくる。

忘れ去ってしまったような、素直な気持ち。

色々な壁にぶつかって、悩んで答えも出ず悩んでいる今。自分にはとても優しくこの本の物語が胸にしみこんできた。

ぜひ読んでみて下さい。

ちなみに解説は、角田光代さんです。