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秘密。 私と私のあいだの十二話

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レコードのA面・B面のように、ひとつのストーリーを2人の別の主人公の視点で綴った短編12編。
たとえば、宅配便の荷物を届けた男と受け取った男の扉をはさんだ悲喜こもごも、バーで出会った初対面の男女、それぞれに願いを叶え合おうといった男の思惑、応えた女の思惑など・・
出来事や出会いが立場の違い、状況の違いでどう受け止められるのか、言葉と言葉の裏にあるものが描かれた不思議な一冊。

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会社でお世話になっている人にお子さんが生まれたので、そのプレゼントを探しに何となくヴィレッジヴァンガードに行って、店内をふらふらしていたら見つけました。

色々な作家さんの作品が一冊に詰まっていて、かなりお得な一冊みたいで。
3冊くらいあったのですが、とりあえず森絵都さんと吉田修一さんの名前に惹かれて買った本です。

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12人の作家たち。


これらの作家達の物語と共に、市橋織江さんの写真が添えられていて、とても綺麗です。

Aサイド、Bサイドに別れた物語なので違う面からみたストーリーはとても面白く興味深いものがあります。

十二編の物語

1.ご不在票-OUT-SIDE-/ご不在票-IN-SIDE :吉田修一
2.彼女の彼の特別な日/彼の彼女の特別な日 :森絵都
3.ニラタマA/ニラタマB :佐藤正午
4.震度四の秘密-男/震度四の秘密-女 :有栖川有栖
5.電話アーティストの甥/電話アーティストの恋人 :小川洋子
6.別荘地の犬 A-side/別荘地の犬 B-side :篠田節子
7.<ユキ>/<ヒロコ> :唯川恵
8.黒電話-A/黒電話-B :堀江敏幸
9.百合子姫/怪奇毒吐き女 :北村薫
10.ライフ システムエンジニア編/ライフ ミッドフィルター編 :伊坂幸太郎
11.お江戸に咲いた灼熱の花/ダーリンは演技派 :三浦しをん
12.監視者/私 / 監視者/僕 :安部和重

かなり短い2ページ・2ページくらいの割合の話なので、内容を言うとネタバレになってしまうので・・。敢えて深くは紹介しませんが。

私的に好きだったのは、1の吉田修一さんの作品ご不在票

その話が冒頭にも紹介している「宅配便の荷物を届けた男と受け取った男のやりとり」なのですが、
一方が幸せの絶頂なのに、一方では悲しみに暮れているという対象的な形がとても面白かった。

あとは、7の唯川恵さんのユキ/ヒロコ

美人なユキと不細工なヒロコ。
互いにその容貌のせいで、得をし、損をし、対照的な日々を過ごしてきた友人同士。
久しぶりの再会で、ヒロコが言った「眠るのが楽しくて仕方ないの」という言葉に苛立ちを覚えるユキ。
そんなユキは、最近嫌な夢ばかりを見ている・・・

美人だからってそんなに得するもんなのか?という自分ではきっと一生分かることはないその「得」が描かれていて、一方、ヒロコが不細工な故に損ばかりしていたということもそうなんだ・・と思いながら話に惹き込まれてしまった。

9の北村薫さんの百合子姫/怪奇毒吐き女も面白かった。

憧れの先輩の稲垣百合子を見つめる主人公の視点と、百合子の弟の視点から見た物語。

色白で、清潔で、言葉遣いがとても綺麗な素敵な先輩、百合子。
その姿と発言には的を射ているものがあり、心の中で「百合子姫」と呼んでいる主人公。

一方、その姉のことを密かに「怪奇毒吐き女」と呼んでいる弟。
そのわけは・・

全く別の視点から捉えられた百合子の姿とは・・

思わず微笑んでしまった作品です。

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その他、三浦しをんさんと安部和重さんの作品も結構面白かったです。

この本に収録されている作家さんで、作品を読んだことがある作家さん(吉田修一森絵都唯川恵北村薫)の方が少なかったので、一冊で色々な作家の物語を読むことが出来て何だか嬉しかった。

もう2冊の方も気になります。

『ありがと。あのころの宝もの十二話』は「十八の夏」の光原百合さんが
『君へ。つたえたい気持ち三十七話』は、エッセイ集みたいなものらしいですが、乙一さん、森絵都さん、角田光代さんなど気になる人が盛りだくさんです。

通勤電車の中で、通学中に、お昼休みに、ちょっと早く起きた朝に・・

とても短い話なので、すぐに読めちゃいます。
活字が苦手な人も、ぜひ☆