やたらと暑い十月最初の木曜日―転校生の瀬田歩は、サッカー部の次期キャプテンと噂される秋本貴史に呼びだされた。貴史とほとんど口をきいたことのない歩には、その理由がわからない。放課後の駐輪場で「なぐられっぱなしだけはいやだ」と唇をかみしめる歩。ところが、彼の耳に入ってきたのは、思ってもみなかった貴史からの申し出だった…。
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あさのあつこさんの本です。
あさのさんの代表作『バッテリー』に続く、新たな青春物語。
バッテリーでの、巧と豪という二人の少年の物語とは、180℃違う物語です。
根っこは多分同じかもしれません。
でも、今回は漫才をやる事になった二人の少年 歩と秋元の物語です。
以前、単行本の方は図書館で借りていたので文庫化して早速購入、もう一度読みました。
おもしろいですね。
やっぱりあさのさんの描く少年はとても魅力的。
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父と姉を事故で失い、母の実家灘に引っ越してきた歩。
人とあわせること、学校や塾を往復するだけの生活に違和感を覚え学校を休むようになった過去があり、転校先の灘の中学でも、目立たない『普通の』その他大勢という存在に溶け込んでいた。
そんな歩に突然「おつきあい」を申し込んできた男がいた。
学校で人気者、サッカー部のエースの秋元だった。
同じクラスというだけで何の接点もない男。
そんな秋元から突然「(漫才の)コンビを組んでほしい」と申し込まれる。
普通の、何のとりえも無い自分にこだわる理由は?
今まで感情を押し殺し、人にはむかうこともなかった自分が秋元に対して怒ったり過去の話を打ち明けてしまったり・・
どんどん変わっていく。
さらけだしてしまう。
これは一体?
・・・
しぶしぶ漫才の相方を引き受け、そして文化祭で「漫才ロミオとジュリエット」で漫才(ジュリエット役)をやることになった歩。
心地良い緊張感と、爽快感。
今まで感じたような焦りは全くない・・
秋元との言葉の掛け合いが歩の心を変えていく。
そして文化祭、本番-
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驚いたことに、これには続編があって、3月には文庫版で2巻が出るようですね。
3巻も出る予定みたいで。
バッテリーの巧は、野球の才能に溢れ、自分には絶対的な自信を持っている少年だった。
しかし今回の歩は、小柄で勉強も運動も平均並で、特技もない、特に目立つことのない少年。
そんな少年が主人公なのに、やっぱり他の登場人物(相方の秋元含め)の影響で性格的にもどんどん良い方向に変わっていきます。
読んでいるほうも何だか爽快で、自分に自信が無い人に、ぜひ読んで欲しい。
「どうして秋元は自分にこだわり続けるのか?」
という歩の葛藤と、秋元への興味。
秋元を好きなメグの存在(歩が気になる女の子)や、学級委員の森口のある過去の告白や・・
脇役なりにそれぞれ個性が光って、主人公を照らしていくんです。
なんであさのさんはこんなに素敵な物語を書けるんでしょうね。
漫才、というちょっと風変わりな物語。
話のテンポもいいので、ぐいぐい惹き込まれてしまいますよ♪