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黄金の王 白銀の王

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二人は仇同士であった。二人は義兄弟であった。そして、二人は囚われの王と統べる王であった―。翠の国は百数十年、鳳穐と旺厦という二つの氏族が覇権を争い、現在は鳳穐の頭領・ひづちが治めていた。ある日、ひづちは幽閉してきた旺厦の頭領・薫衣と対面する。生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられた二人の王。彼らが選んだのは最も困難な道、「共闘」だった。


沢村凛さんの本です。
 
書店に行く度、本当にどの書店でもかなり推しているのを見かける本作でした。
いつかきっと読んでみようと思っていて、ようやく読む事ができました。
 
ファンタジー系の話って、実は結構苦手。
序章を読んだ時にすっと入ってこなくて、もしかしてダメかも・・・と思っていたのが嘘のように、大変面白く読む事ができました。
 
何が憎いのか、発端は何だったのか分からぬほど、お互いを憎み、殺し合ってきた二つの氏族。
殺さず生かす方法で、二つの氏族のいがみあいを収め、一つとなって国を治めようと決意した二人の王の話。
 
どちらの王も、人の上に立つ素質を持っている。
だけど、お互いに持っていない部分を相手が持っているという面では、二人協力しあって国を治めていくことが最善の方法なのだ。
しかし、一方は滅ぼされるべき立場にいる側。
表だって協力することが難しい中で、氏族の名や立場を捨ててでも国の統治のために動く王。
 
いつどちらかがは向かってこないとも限らない。
信頼しあえているとも言えない関係だが、長い長い時間をかけて、変わって行く二人の王の関係がとても良いです。
 
そして、特に感動したのが、ひづちの妹と(敵の血を引く人間)と結婚した薫衣の気持ちの変化。
お互いが敵同士の身の上で、戦略的に結婚をしたのに、いつしか惹かれ合い、信頼関係を築いていくところが良く、特に最後の妻が本音を打ち明けるシーンでは思わず感動してしまいました。
 
長い長い歳月をかけて、二人の王が作り上げようとしてきた世界が出来上がっていく最後の一文。
読後、爽快感で一杯になりました。
 
沢村さんの文章もとても優しさが溢れて読みやすく、好感が持てました。
他の作品もぜひ読んでみたいです!
(4.5点)