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万寿子さんの庭

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「あなたがお隣に引っ越してきてから、わたしの人生はまた乙女時代に戻ったかのような活況を取り戻しました」竹内京子、二十歳。右目の斜視にコンプレックスを抱く彼女が、就職を機に引っ越した先で、変わり者のおばあさん、杉田万寿子に出逢った。万寿子からさまざまないやがらせを受け、怒り心頭の京子。しかし、このおかしなやりとりを通じて、意外にも二人の間に、友情ともいうべき感情が流れ始めるのだった。半世紀の年齢差を超えた友情が、互いの人生に影響を与えていく様を温かな筆致で描く感涙の物語。


黒野伸一さんの本です。
 
限界集落株式会社」が面白かったので、何となく手に取ってみた作品でした。
特に期待していなかったのですが、本当に読んで良かった!
 
まず、文章の巧さ。
すらすらと読みやすい、流れるような文章。
 
そして20歳の京子と78歳の万寿子の関係がとにかく良いです。
 
最初は、背中に張り紙を張られたり、暴言を吐かれたりと意地悪されるだけだった関係から、いつしか「友達」と呼べる関係になっていく二人の姿が良いです。
 
78歳の万寿子さん。
とにかくパワフル。
お洒落な万寿子さんは、洋服を買いに京子と一緒にデパートへ出かけたり、昔来ていたワンピースを取り出して来てみたり。
時には亡くなった旦那似の男性にときめいたり。
清々しいほど、万寿子さんが良い味を出しているのです。
 
そして好きな同期の男の子に気持ちとは正反対の態度を取ってしまう京子。
個人的にはどちらかの男性とくっついてくれたら嬉しかったけど、暇な仕事に気力を見出せず現状維持しているだけだった京子が、万寿子さんとの出会いによって少しずつ強くたくましくなっていく姿が良いです。
 
ただ、痴呆が始まってからの奮闘、「万寿子さん」との別れ。
 
買い物や旅行に一緒に出かけたり、歳の差を感じさせない友達関係を築いた後に、本来の万寿子さんが失われていく過程は読んでいて辛かったです。
 
でも、読んだ後凄く前向きな気持ちになれました。
読んで良かったと思える作品。
 
黒野さんの他の作品もぜひ読んでみようと思いました。
(5点)