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あやかし草子 みやこのおはなし

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古き都の南、楼門の袂で男は笛を吹いていた。門は朽ち果て、誰も近づくものなどいなかった。ある日、いつものように笛を吹いていると、黒い大きな影が木立の中に立っていた。鬼だ。だが男は動じず、己を恐れない男に、鬼はいつしか心を開き……(「鬼の笛」) 京都に伝わる民話・伝説をベースに、泉鏡花賞受賞作家が繊細な筆致で紡ぐ摩訶不思議な物語。「鬼の笛」「ムジナ和尚」「真向きの龍」「天つ姫」「機尋」「青竹に庵る」の6篇を収録。


千早茜さんの本です。
 
千早さん・・・・・・好き!!すっごい好きだ!
 
と思わず叫びだしたくなるほど、好きですこの作家さん。
「からまる」「魚神」を読み、そして本作で3作目ですが、好きかもが確信に変わりました。
凄く私好みです!
 
デビュー作「魚神」の感じに近いでしょうか。
江戸時代、それより前(貴族がいるような)くらいの時代でしょうか?
昔昔の時代が舞台です。
 
魔のモノ、モノノケ、伝説や言い伝え――昔から人間は想像力が豊かだったなあと現代人の私から見ると思うのですが、もしかしたら、昔はもっとこういう異形の者たちが、人間の棲む世界に紛れて存在していたのかもしれません。
 
鬼・白狐・ヘビ・天狗等など・・・人間の世界にふと紛れ込み、人間の世界から少しばかりはみ出した人間達がその姿を見たり、触れたりすることになる不思議な話。
元々こういう話、結構興味があって好きなのですがね。
千早さんの上手い所は、とにかく男女(本作の場合、人というのはちょっと違うのか。人と異形のもの)との交わりというか、この手で触れたら壊れてしまいそうな、繊細な関係というのですか?
それを描くのがとても上手いのです。
 
例えば、天狗と少女、鬼が作り上げた女と笛吹きの男――全てにおいて、艶めいた(かといって、艶めかしいとも違うのです)色気というか、エロティックな雰囲気が凄いんです。
全くいやらしくなくて、なんというか切なくなってくるほどのこの描写は・・・千早さんの特徴かもしれません。
 
悲恋というか、何処か影のある結末だったりするのですが、心地良く印象に残ります。
 
鬼の笛
ムジナ和尚
天つ姫
機尋
 
が特に良かったです。
心地良く残るこの余韻をぜひ。