埼玉県の長閑な田園地帯で、肉片と骨の屑のようなバラバラ死体が発見された。被害者は現場近くにある製薬会社・スタンバーグ製薬に勤めていた桐生隆。仕事ぶりも勤勉で質素な暮らしを送っていた青年は、なぜ殺されなければならなかったのか?埼玉県警捜査一課・槙畑啓介は捜査を続ける過程で、桐生が開発研究に携わっていた“ヒート”と呼ばれる薬物の存在を知る。それは数ヶ月前、少年達が次々に凶悪事件を起こす原因となった麻薬だった。事件の真相に迫るほど、押し隠してきた槙畑の心の傷がえぐり出されていく。過去の忌まわしい記憶を克服し、槙畑は桐生を葬った犯人に辿り着けるのか――
中山七里さんの本です。
むむむ・・・これは中山作品の中でも微妙だったかも。
毎回結構期待して読んでいるせいもあるかもしれませんが、何だこの中途半端なラストはー!
今回は、「連続殺人鬼カエル男」寄りの、ダークな中山七里作品でございます。
全然私の中では、範囲というかこっちの系統も嫌いではないのですが・・・
何だか長かった割には、凄く中途半端で作品が終結しきれていないような。
続編書けそうなくらい中途半端よ!
むしろ前後篇にしてもっと書き足しても良かったのでは?
刑事の槇畑の過去や、警察庁からやってきたエリート捜査員の宮篠の過去が重いだけに、結局その過去から解き放たれる事もなくもやもやしたまま終わってしまう感じが何より中途半端。
こういう設定にした意味が全く活かされていないっていう。
殺人鬼の正体が明らかになっていくにつれ、結局怪しげな薬を作っていた会社の事や、主人公と絡みのある人間との関係とか、ミステリでもなくホラーでもなく、物語としてあまりにも色々と詰め込んでしまったがために、堂にも収集がつかなくなってしまった、感でいっぱいでした。
うーん、中山作品には今まで外れという外れがなかったので、今回は残念としか言いようがないです。
結局読むのに時間がかかって読み終えた割には、得るものが少なかったという感じ。
そういえば、烏は攻撃をされた人間の顔はずっと覚えている――というのを聞いた事があります。
烏に向かって石を投げつけたり、攻撃をしようとするものなら、後後で仕返しが待っているのだと。
この作品を読むと、あながち冗談ではないのだろうと思ってぞっとしましたね。
烏って、思っている以上に図体がデカイですよね。
大の大人と対峙しても結構な大きさ。
これが子供、ましてや赤ん坊だったら・・・この作品の中に出てくる赤ん坊のような事になるのもありえないとは言い切れないです。
殺されてしまった桐生の過去と背負ってきたものが重くて暗いものだっただけに、もう少し真相を詳しく描いて欲しかったかなあという印象。
それぞれの登場人物は印象的で上手く描けているだけに、非常に勿体ないというか残念でした。
これは加筆修正して文庫化しても良いのでは?
と上から目線で提案してみる。