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聖夜 School and Music

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『第二音楽室』に続く“School and Music”シリーズはオルガン部が舞台。ものごころつく前から教会の鍵盤に親しんだ鳴海は、幼い自分を捨てた母への複雑な感情と聖職者としての矩(のり)を決してこえない父への苛立ちから、屈折した日々を送ります。聖書に噛み付き、ロックに心奪われ、難解なメシアンの楽曲と格闘しながら、高3の夏が過ぎ、そして聖夜。瑞々しく濃密な少年期の終わり。闇と光が入り混じるようなメシアンの音の中で鳴海がみた世界とは――


佐藤多佳子さんの本です。

姉妹編として「第二音楽室」の発表もあり、先にそちらを読んでいたのですが、時代設定の違う学生を一人称にした音楽に携わる学園モノ、と来たら面白くない訳がありません。
非常に私好みの設定だった訳ですが、
本作は「黄色い目の魚」が好きな人は、絶対気に入るかと。


佐藤さんは、何にしても入念に題材を調べて書く方ですから、音楽をテーマに本作ではパイプオルガンをメインに描いています。
佐藤さんは男子高校生を、かなり魅力的に描く方だと個人的に思います。

牧師であり聖職者の父と、教えに背き離婚して別の男性との結婚を選んだ母。
楽器の演奏や才能があり、なんでもこなせる半面、何だか分からないけれど、もやもやを抱える主人公が、葛藤しながらも答えを見つけていく様が丁寧に描かれます。


器用でそこそこなんでもできる、という人の気持ちが全く分からない不器用な人間ですが、人間は結局ないものねだりで。
自分にないものに憧れ、嫉妬や羨望を向けるのでしょうか。

主人公の、何処か冷めたような感覚が心地良く心に残る作品でした。
良作です。
 
追記:
あとがきに、本シリーズは実はあと数編のアイデアがあるというようなことが書いてありました。
確約はできないけれど、いつか発表できる日が来るかも、みたいな形の素晴らしい予告が!
ぜひとも期待したいですね!