No-music.No-life

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近くにあるのに遠い場所。

今の家に引っ越してきて、もう大分年月が経つ。
 
私は今の家を、未だに「実家」と思えずにいる。
 
 
眠ると必ず夢を見る私であるが、いつも夢に出てくるのは、幼少時から成人する1年前くらいまで住んでいた一軒家である。
 
同じ市内にあり、また今の家からもそう遠くない場所にあるにも関わらず、私はできるだけその家に近付く事を避けてきた。
 
家を手放す事になった時、すぐに買い手が付いて、自分たちとは全く縁も所縁もない人のものになった。
 
自分が幼稚園生だった頃から、社会人になるまで。
 
それは、考えてみたら相当な事だ。
 
いいことも嫌なことも、沢山あった。
だけど長い間慣れ親しんだ家には、思い出が一杯詰まっていて、落ちつける場所だった。
 
 
一軒家暮らしから急にアパート暮らしになり、近隣の人へ気を使いながら生活することにも大分慣れてきた。
だけど、
私はやはり今の場所が寛げる場所ではないことを、ずっと感じてきた。
 
 
今日はたまたま家があった場所の近くを通る事になり、好奇心からか少し寄り道がてら慣れ親しんだ道を車で走らせてみた。
 
近隣には大型スーパーやパチンコ店が立ち、中心部にはバイパス道路が通ってにぎわっている。
 
田んぼと家しかなかったその周辺は、今や新築住宅が立ち並び、あの頃の面影はほとんど残っていなかった。
 
 
結局、あの家に別の誰かが住んでいるということが悲しくて、家を見ることはないままその近くを通り過ぎるだけだった。
 
私の中では、ずっと消えないわだかまりみたいなものかな。
 
家族崩壊と共に、失われてしまったもの。
 
例えその家に住んでいた時から、崩壊の兆しがあったとは言え、あの家の存在だけがそれを繋ぎとめている最後の砦みたいなものだったのかもしれない。
 
 
なんだか色々な事を急に思い出して、私は少しだけ悲しくなった。