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重力ピエロ(再読)

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兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。




伊坂幸太郎さんの本です。

多分、私の中で生涯のうちに何度も読み直したいと思う作品の中に入っています。
伊坂さんの作品の中でも、一番好きです。

一読した後、とてつもなく印象的で、きっとまた読もう!と思っていたのでした。
昨年映画化され、原作を読んで少しばかり時間が経っていたけれど・・・あの映画は良いですね。

細部の設定は少し変わっているけれど、キャスティングが素晴らしかったし、原作の世界観を壊していない。

今回は読みながら、映画のキャストを思い描きながら物語を追う事が出来て、二重の意味で楽しめました。

そして、父役の小日向さんはやっぱり合ってるなあと再確認。

「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」

父のその台詞で、目頭が熱くなりました。




<ネタバレ含みます>


最初に読んだ時の感想と、やっぱり変わりません。

葛城に制裁を与えた春を、私はどうしても否定できないのです。

悪を悪だと思っていないどころか、全く反省の色が見えない葛城。
人は変わる。
変わる事を、更生することをただ信じて、機会と時間を与え、警告をしてきた春。

非暴力を謳ったガンジーを敬愛する春の、最大限に相手の事を考えた、それは厚意だったのかもしれません。
最後まで、暴力や武力以外の何かを信じたかった春は、だから葛城を許す事が出来なかったのか。


「悪」を「悪」で制す。

葛城を殺した春は、確かに人殺しという犯人になる。
だけど、葛城が死んだ事で救われた人がきっと沢山いる。

母、父、兄、そして被害者――

それを、だから私は悪い事だと一概に断言することが出来ない。

私は、間違っていますか?




謎解きの楽しさ、ミステリの楽しさはもちろんある。

だけどこれは、「最強の家族」の物語だ。