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東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

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母と子、父と子、友情、青春の屈託に涙が止まらない。ナンシー関なき後、最強のコラムニスト、文章家と目されている著者が打ち立てた金字塔。現在の日本文化の、最も高い達成というべき傑作。




リリー・フランキーさんの本です。

第3回本屋大賞第一位、映画化、ドラマ化、舞台化と一時かなり話題になっていた作品ですが、そういう作品はなかなか図書館で借りる事が出来ないもんです。

あの売れてたやつでしょ?
しかもリリーフランキーでしょ?

と、内心なめくさってました。すいません。

地元の図書館にひっそりと置いてあったので、借りて来ました。
今更ですが、読みましたよ。




うーん・・・痛い。
痛くて苦しい。

別に、涙が止まらないなんていう煽り文句を信じてはいないが、別に涙は出なかった。
だけど、いつかそう遠くない未来にやってきてしまうであろう、母親の死というものが本当にリアルに思い描けてしまいそうな、それほどに読み手に伝わってくる話であった。

そして、母と子、二人暮らししている私としては・・・怖くもあった。


しかし、そこまで分厚いと思わないで読んだけど、何だろう。
読むのに2日もかかったなあ。

読みづらい文章ではないのに。
濃厚だからかな。

そのせいか、なかなか読み進められない悔しさというかもどかしさで、前半はあまり感情移入出来なかった。

多分、リリーさんの20・30代の頃の自堕落ぶりが私的に許せなかったせいもあるかもしれないなあ。

父と別居して、働きづめのオカン。
明るくて誰とでも仲良くなれるタイプだけど、親しき仲にも礼儀ありを物凄く大事にする人だから、何処にいても、居場所がないような心もとなさを抱えて生きている。

身内の家に世話になっている時も、何処か肩身が狭そうで、実の母親にも甘える事をせず、色々な土地を転々として、還暦を迎えても、落ち着ける「家」がないような、そんな状況。

絶対に苦労してるのに、どら息子のためにお金を送ったり心配をしてくれるオカンの存在があまりにも不憫で・・・。

リリーしっかりせんか!

と読んでいてイライラしながら、しかし少しずつ母親に恩返しを出来るようにまともな仕事に着き、落ち着いてくるリリーさん。

母親がリリーさんのいる東京に来てから、再びガンに侵されるまでの数年間・・・幸せな日々。

このあたりからどんどん伝わってくる、不穏な気配。

後半の、闘病しているオカンの姿が痛々しくて読んでいて辛かった。
そして、失って初めて「あの時●●をしてあげたら・・・」「どうしてあの時・・・」と後悔するしかないリリーさんの悲しみが伝わってきて、もういたたまれなくて。。。



私は今、母親と二人暮らしをしている。
そんな母は、私が高校一年の時に、乳ガンで入院・手術をした。

今でも定期的に病院に通っているが、今の所転移は見られないという。

だけど、定期的に通わなければいけないというのは、転移する可能性があるから・・・なのではないか。

ガンの転移はなくても、糖尿病・パニック障害甲状腺の病気・・・など、次から次へと色々な病気にかかる母親。

そんな母親をおいて、一人家を出ること。

それが大きな決断であるが、未だに出来ずにいる。


リリーさんのように、若い頃はバカをやって母親にこんなに心配や苦労をかけても、今はこうして立派に有名になって仕事をするようになって、東京で一緒に住もうと呼び戻せるような、そんな未来が待っているとは思えない。

しかし、確実に老いていく母の姿。

時々帰ってくる兄や、ほとんど帰ってこない妹にはきっとわからないような、一緒に暮らしているから故の、母の確実な「老い」。

それに気付かないふりをして、今はただ傍にいてあげることしか出来ない自分は、果たして親孝行が出来ているのだろうか・・・


いつか、近い将来母は更に年老いて、体も不自由になっていくのだろう。
考えたくないが、いつか亡くなる日もくるのだ。

そういう色々な思いが、どんどん膨らんで、苦しくて、辛かった。

親孝行、したい時には親はなし。


尤もだ。

大の大人が、しかも男が・・・って敬遠することなかれ。

ザコン男は引くけど、皆に愛されて惜しまれて亡くなったリリーさんのオカンは、きっと人一倍苦労もしたけど、幸せだったと思う。

リリーさんが注ぐ母親への愛情は、マザコンなんていう言葉で片付けて欲しくない。
そんな、親子の物語だ。