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天体小説 ―乙桜学園祭2― (トークショーに岩井俊二監督登場!)

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血の味がする――

小雨が降る中、何が悲しくて駅まで全力疾走しなければいけないのか。
息を切らし、ただひたすらに走る。

終電が迫っている。
これを逃したら帰れなくなる。

ただそれだけを思いながら、すきま風は走る。走る。走る――

これほど家が遠いという事を呪った事は久々の事であった……。




乙一こと、安達寛高氏と、桜井亜美が映画監督として短編映画を作った。
その第一弾、乙桜学園の時もそういえば走った気がした。

今回は、その第二弾ということで、先日前売り券を買ってきた。
2週間限定レイトショー上映ということで、明日は休みをもらったから、行ってしまおうかと向かった訳だったのだけど、
21時からの上映なので、会社帰りに真っすぐ渋谷に向かったら19時前に着いてしまって、時間を潰すのが大変で。
チケットを引き換えてきたら、整理番号が7番で。あと、ようやくサイン入りポストカードももらって。
流石平日だと思いながら。


「こと」を終えて満足気にホテルから出てくるカップルや、明らかにエンコーなのでは?と思うような、中年小太りサラリーマンと若い女の子の2人連れや、会社帰りのデートなのか、ホテルに向かって歩いていく様々な人間達。

O-EASTでは、秋葉系?のイベントみたいのがあったらしく、オタク系の人が次々と吐き出されてきて、O-WESTでは、UNDER THE COUNTERの対バンライブがあったみたいだった。

なんでこんな場所にあるんだ!とO-EASTに行く度に思っていたけど、ユーロスペースやシアターTSUTAYAに行く時もいつも思う。

「いかがわしいんじゃ!ボケェ!」


21時15分前に開場し、全ての観客が中に入ったけれど、全部で30人いるかいないか程度しか席は埋まっていなかった。

21時。

安達寛高氏の一周忌物語が始まった。




一周忌物語

【以降、ネタバレ含むため注意!】

1年前に突然息子を交通事故で亡くした康子は、ある日息子の友人から、生前東京で暮らしていた息子には親しく付き合っていた女性がいたと知らされる。まったくそんなことは聞いていなかった彼女は、大急ぎで元恋人の連絡先を突き止める。やがて一周忌の当日、東京からその女性が訪ねて来て……。



監督:安達寛高
出演:小深山菜美/要田禎子/柴原虎之介/染谷将太/藤真美穂



脚本は、悪くないのだと思う。

本であったら、文字という媒体であれば、きっともっと深い味わいのある作品だったのだと思える。

途中で、何となく察してしまう。
この子は、「元恋人」ではないのだなと。

そこから展開する、学生時代の息子の姿と、銀河鉄道の夜をモチーフにした展開はとても良かったと思う。

昭和らしい古臭い田舎の一軒家の、独特の味。

息子の「本当の元カノ」なのかを疑う母親。
必死で息子との思い出を語ろうとする、「彼女」。


単線の電車が、ごとごとと走っていくシーンや、自然溢れる田舎街の情景。
夕焼けの薄暗さと切なさが、各シーンに出ていて良かった。

・・・のだけど、映画のシーンだけを観ているだけでは理解できない部分がとても多かった。
本とは違って、映画は(映画館で見る場合は)元に戻って見直す事が出来ないのだ。

じっくりと一つ一つのシーンを胸に刻みながら、今後の展開にドキドキしたりする。

私は理解力がないから、最後の抱擁のシーンの意味が理解できなかった。

もっと言ってしまえば、息子を亡くした母親がその割にはやけにあっさりとし過ぎていた感じもする。

うーん、悪くないんだけど・・・1年も経ったら忘れてしまうかもしれない。
そんな作品。

前回の立体東京と比べると・・・荒削りながらも、全く台詞がないという主人公と、その後の展開はなかなか楽しめて。
だけど映像の出来としては、今回の方がやっぱり進歩している気もする・・・

のだけど・・・難しい。

作家は作家として活動するのがいいのではないかな?と私は思ってしまう。

映画監督が小説も書いて成功している、という例はとてもまれなのかもしれない。

とはいえ、「駄作」と言う程悪くはないし、好きな人は好きな作品だと思う。
もし第三弾があるのなら、期待したい。




PLANETARIUM

孤児院育ちの天涯孤独なメイと、父親を知らないキョウ。ただのクラスメイトだった2人は、1冊の本を介して結びつく。お互いを強く求め会うなか、やがてメイが妊娠する。そんな中、父親への葛藤を抱えたキョウは、忽然と姿を消すのだが――



監督:桜井亜美(野辺山シーン特別監督:上野樹里
出演:中谷友保/リーザ/杉さやか/上野まな/佐々木一平 他



前作人魚姫と王子より、確実に金がかかっていないな、と思われる無名のキャストによる映画。

どうでもいい話だが、どう見ても中学生には見えないだろっ?!

しかし、話としては本来の桜井亜美の描く作品にかなり近い感じだと思う。

中学生同士のセックスシーン(少しだけリアル)、14歳の母状態の展開には、妙にさめざめした気分にもなったけれど、桜井亜美の作品だ!と言われてしまうと、妙に納得したりして。


しかし・・・
施設育ちの中学生に、一人暮らしをさせるのか。

そして中学生同士の同棲、中学生なのにバイト。中学生だから?いかがわしいバイト・・・

色々な問題を詰め込んでみました!みたいな、観ていてとても「後味の悪い」映画だった。

結局、この子は子供を産んだって事なの?
中盤から終盤にかけて、時系列がめちゃくちゃになってしまって(私の脳内で)、一体何がどうなってこうなったんだ?と頭がこんがらがってしまった。

この作品を観た皆さんは、ちゃんと理解出来たのか?
理解できていないのは、私だけ?




そして、本来ならば2本立ての映画なのだけど、今回は特別に更に3本目の短編が待っていた。

桜井亜美監督最高の夏休み

どっちかと言えば、こっちの作品の方がまだ楽しめた。
かなり見覚えのある渋谷の風景。

個性豊かな男達と、姿の見えないアイドル。


ただ、これが上映されることを知らないで来た私は、この作品が最初、素人の作品なのかと勘違いしたのである。
とにかく時間との戦いであり、この後にトークショーがある・・・と考えたら、早く終わってくれという気持ちでしかいられなかった。

しかし、最後のエンドロールで桜井亜美の監督作品であることに気づいて、びっくりした次第。

という訳で、変な勘違いで見てしまった作品で、非常に勿体ないことをした気がしてならない。




3本が終了し、10時50分くらい。

11時にはここを出ないと終電に間に合わないため、時計を観ながらそわそわしていた。

ドアが開き、普通に桜井亜美さんと乙一さんが歩いて舞台上に。

そして「今回特別ゲストで、岩井俊二監督にお越しいただきました」という声に驚いて振り返ると、
な、なんと!

普通に観客席に座っていたらしい岩井監督が立ち上がり、舞台に上がってきました。

またちょっと太ったかな?といった感じでした。
髪も長くなっていて、もっさりしてましたが、「あーあの岩井監督が・・!」と思うと、感慨深かったです。あ、でも、リリィの舞台挨拶の時に観たかもしれないけど。

岩井俊二監督、中谷友保(『PLANETARIUM』主演)、桜井亜美監督、安達寛高(乙一)監督の4人が椅子に座り、かなーりまったりとしたトークを繰り広げておりました。

相変わらず乙一さんは、もっさりとしたイケテない(笑)感じの根暗な青年という出で立ちで(しかしそれが乙一って感じて良いんだけど)、もそもそと喋っていて。

桜井さんは、くるくるに巻いた髪が豪華で、今回もセクシーな印象。
基本的に桜井さんが話題を出しつつ、他の人に話を振って、他の人がそれに答えていくという感じのトークショーでした。

司会進行がなく、まったりとトークしているので、何となくテンション低めの感じでしたが。


今回は、「最高の夏休み」を上映したということで、初めてその作品を観たという岩井監督のコメントや、乙一さんからの感想などがありました。

そして、乙一さんが奥さんと上手くいくきっかけになった映画が、花とアリスだったのだそう。
奥さんを初めてデートに誘った時に観た映画らしく、その後にお付き合いを申し込んだらうまくいったらしい(笑)

「岩井監督には、足を向けて寝られません(笑)」と乙一さんが言っていたのが印象的でした。




しかし、無常にも時間はきてしまう。

乙一さんの足元に置いてある商品らしき、多分ハロウィン関係のプレゼントが気になりつつ、トークショーを最後まで観たいという気持ちにあらがって、私は一人立ち上がり、会場を後にしたのでした。

そして、冒頭へと繋がります。

全力疾走をして、途中で物を落として、タクシーから降りてきたお兄さんに「大丈夫?」と声をかけられて、「大丈夫っす!」と言って、走る走る走る!

なんとか終電に間に合い、帰宅したのは1時。

・・・・ハード過ぎます。

疲れました。

でも、乙一さんと岩井監督を見れたので、行って良かったです。


第三弾があるのなら・・・・期待しちゃいましょう。