No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

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“30歳”という岐路の年齢に立つ、かつて幼馴染だった二人の女性。
都会でフリーライターとして活躍しながら幸せな結婚生活をも手に入れたみずほと、
地元企業で契約社員として勤め、両親と暮らす未婚のOLチエミ。
少しずつ隔たってきた互いの人生が、重なることはもうないと思っていた。
あの“殺人事件”が起こるまでは……。
結婚、仕事、家族、恋人、学歴、出産――。
社会の呪縛は、娘たちを捕えて放さない。

だからこそ
すべての女子は『箱入り娘』である。




辻村深月さんの本です。

サイン会に参加したくて、購入した本でした。
最近は図書館で借りて読んでいたりするんですが・・・・ああ、この作品、とても良かったです。

休みが重なっていたせいで、少しずつ少しずつ読み進めていたのですが、読み終わった瞬間に「もう一度読み直したい」と思ったくらい、深かったです。

タイトルの意味が繋がった時――衝撃でした。




辻村さんは、田舎に住む人の都会に住む人に対する羨望やコンプレックスを書くのが、豊島ミホさんとは違う意味でとても上手い。

「田舎」という世界は、とても狭い世界だ。
ブランドものを持っている事で周囲の人間に虚勢を張ることが出来、結婚や出産をすることが一つの目標地点になる。
そしてそれを成し遂げていない人間に対して、驚く程周囲の人間は冷たいのだ。

前の会社にいた時、つくづく狭い世界だなと思っていた。
そんな周囲の人間を見て、私は常に上からそれを達観していた。

私はこんな風にはならないと、あなた達とは違うのよと。

けれど、辻村さん自身が「チエミとみずほは、どちらが私でもおかしくなかった」というコメントが載っていますが、それは私にも言える事だった。

私はみずほのように、誰かを上から見下ろしている側でもあったし、誰かを見上げて羨望のまなざしを向けている側でもあった。

母親と娘の密接過ぎる関係。

チエミとその母親のような関係ではないにしろ、他の家の子に比べて、私は大分母に色々な事を話している。

チエミの母が、婚前交渉を持つ事を汚らわしいと言うシーンがあったが、そんな古臭い考えの人なんて今時いるんだろうか?と思ったら、私の母がそうだった。
汚らわしいと直接的に言った訳ではないけれど、体の関係があった=結婚をするという方式が成り立っていたのだ。

子供と親は、そういった意味で考え方や捉え方が全く違っている。
血が繋がった親子であっても。
例え色々な事を話している関係であっても。




辻村さんの描く、女同士の関係は時に重くてどろどろしたものを強く感じます。
けれど、これが女というものなのです。

それは読んでいてときどき辛くなるほどだけれど、その描写があるからこそ、ラストの救いのある展開にほっとさせられるのも確かなのです。


最近の作品はそんなに印象に残らない感じだったのですが、この本はまた近いうちに読み返したいと思いました。


ただ、講談社から発行ということで期待していたのですが、他作品とのリンクが今回もなかったですね?

辻村深月、第二章の始まりという事なのでしょうか。

少し寂しくもありますが、今後の作品にもとても期待しています。


土曜日のサイン会、とても楽しみです。