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純情エレジー

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べつに恋や愛を真剣に考えたわけじゃなく、ただカラダを重ねただけなのに……上京して、仕事して、別の恋人ができても、ふとした瞬間に心を支配する愛しい思い出たち。20歳のデビューから7年。より甘く、切なく、官能的に開花した著者が、人生最初の岐路に立った「オトナ」になりかけの女の子を描く全7篇。

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豊島ミホさんの最新刊です。

デビュー作[青空チェリー]以来の性をテーマにした?連作短編集です。

少し久しぶりに豊島さんの本を読みましたが、今回もなかなか良い余韻を残してくれる作品ばかりでした。
性がテーマと言うことで、際どい描写もあるにはありますが、色々な本を読んできた今の私からすれば、[そんなにエロくない]という印象を受けました(笑)

むしろ、読後に残る痛いような、苦しいような、せつないような余韻が秀逸。

田舎に生まれて育った豊島さんだからこそ、田舎の描写、都会に出てきた田舎の人間の心理をよく理解しています。
ここに共感できるか否かは、田舎に育ったかそうでないかが分かれ目ですね。
そして地味な人間を書くのが上手い。

豊島さんの小説は、良い意味で読者に近い小説だと思うのです。
こういう人、いるよなあと思う登場人物。劇的な事の起こらないつまらない日常でさえ、人はそれなりに何かを考えて生きている。
手を伸ばしたら届きそうな、そんな身近な存在の、どこにでもいる地味な人間の物語。

私もこんな小説が書きたくなりました。

挿絵の微妙なエロ加減が収録されている物語に鮮やかな色を添えてくれます。