No-music.No-life

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自転車を走らせる。

愛用の整腸剤が切れたので、朝一番で地元の病院へと自転車を走らせる。

9時から始まっているはずの病院は、開院5分後に到着したというのに既に沢山の人で待合室が埋まっていた。
本を読みながら待っていると、割とすぐに名前を呼ばれてほっとする。

薬をもらうため、薬局へと向かう道すがら――視界に何か見覚えのあるものを捉えた。

「あ……」

友達の車だ。

少し前、ほんの数週間前であれば、その子の姿を探して声をかけただろう。
そしてお互いに「偶然だねえ」なんて言いながら、笑いあえていただろう。
だけど――

途端に私は縮こまってしまった。
怖い。
もし声をかけて、無視をされたら?
軽くあしらわれたら?

心臓がドキドキしている。
どうか私がいる間に友達が来ません様に――そう思いながら、だけど自然と友達の姿を探している自分もいる。

会って、前みたいに話がしたいという気持ちと、拒絶されたらどうしようという相反する気持ちがごちゃ混ぜになって、私はとても悲しくなった。

結局、友達のお母さんが友達の車を借りて病院に来ていただけみたい。
だけど、多分、友達のお母さんは気付いただろうな。
それで帰ったら、「今日病院で○○ちゃん見たよ」なんて、友達に言うのかもしれない。

それを聞いた友達は、何でもないことのように聞き流して――

私は頭を振り、その考えを振り払う。

帰り道、いつもとは違う知らない道を通ってみる。

家からさして離れた場所でもないのに、通ったことのない道というのはどうしてこんなに新鮮なんだろう。
わざと複雑な、細い道を選びながら自転車を走らせる。

昨日までよりは少しだけ冷たい朝の空気を肌に感じながら、私は自転車のペダルを漕ぐ。

そうしてようやく広い道に出ると、「あれ、まだここなんだ」という驚き。

そう――逆に遠回りをしていつもの道に出てしまったらしい。
なんだか……自分みたいだなあと思って、私は苦笑した。

皆と同じ目的や場所に向かっているはずなのに、途中で挫折しそうになったり、物凄く遠回りして、皆より遅れて目標地点にようやく到着する、みたいな。
皆より要領が悪くて、人より努力しないと同じスタート地点に立てなくて。

だけど、それでも――最後はちゃんと皆と同じ場所に到達しているからさ。

頑張ろう、自分のペースで。
友達のことはまだ、自分の中で消化しきれていないけれど――不器用だけどこれが、自分だから。

うん、頑張ろう。