あたし、夏美。19歳、んでギタリスト。愛器の真っ赤なギブソンで、大好きなメンバーとぶっ飛んだライブの毎日……ずっと続くと思ってた。魂の底からリスペクトしてたボーカルの薫が、突然自殺するまでは。真実を確かめなきゃ、死んだなんて認めない! 気弱な29歳の芸能マネージャー・祐司を引き連れ、今あたしは走り出す――
誉田哲也さんの本です。
前回読んでいたジウ以来の誉田さんだったので、とても久しぶりな気がしてしまいました。
誉田さんといえば、「ストロベリーナイト」などの警察小説なんかで見せるかなり重い内容であったり、死体描写の残酷さが特徴的だったりもしますが、「武士道シックスティーン」などで見せる10代の女の子の弾けた感じの文章もなかなか上手い作家さんだと自分は思ってます。
まるで同一人物が書いたとは思えないほど、がらりと違った作風を見せる人だなあと思うのですが、今回は「武士道~」寄りの作品です。
人は死にますが、殺されたとかそういう訳ではないので・・
この作品は、実際にライブに行っていたり、バンドをやっている人にとっては、二度美味しい小説かと思います。
自分もバンドをやっていた(もはや過去形)事があるので、スタジオ練習の描写とか、いつも行くライブハウスの情景などを思い浮かべると、思わずニヤリとさせられました。
冒頭の文章を読む限りでは、「主人公の女の子をスカウトして、華々しく芸能界デビューをし、栄光をたどっていく」という、単純な話なのかなあと勝手に想像していたのですが、実際はデビューという話に至ってもいなくて、主人公・夏美の所属しているバンド内での話が中心となっています。
今回は、夏美を一目見てからその素質に心惹かれてスカウトをする、芸能プロダクションの宮原のちょっと冴えない感じが個人的に好きでした。
悪い奴じゃないけど、垢抜けないみたいな(笑)
悪い奴じゃないけど、垢抜けないみたいな(笑)
今後、夏美が芸能界に入りスター街道を突っ走っていくのだろう未来が見えるような結末は、良かったですね。